2001年.いよいよ21世紀の始まりですね。
新年そして新世紀おめでとうございます。2001年も皆さまにとって良い年となりますように。
さて、今月は破産についてお話しましょう。「新年から縁起でもない」とお叱りを受けそうですが、「クレジット会社から借金をし過ぎてどうしようもない。毎月の支払いをすると生活費が残らない。どうしたら良いでしょうか」などという相談を受けることもあります。新年だから、そして新しい世紀だからこそ、過去のマイナスをきちんと整理して新しく再出発を考えた方が良いともいえますね。「どうしようもないところまで追いつめられた」と思った場合は、ノイローゼになったりするよりは、自分で対応できるところまで整理して対策を練ることが必要でしょう。もちろん、放漫な生活態度で、経済的合理性のない生活をした挙げ句に簡単に破産を申請するということはお薦めしません。
しかし、米国という国は、日本と比べると「敗者復活戦」「やり直し」が比較的容易にできる仕組みになっています。(最近日本でも、破産法の改正が話題になっていますが、こちらは規定を多少緩和しようという方向にあるようです)失敗から学び新たに自分の生活を立て直す、という積極的な態度で「破産」をとらえることができます。
破産法第7章破産と第13章破産
米国で普通の生活者・消費者が関わる破産には主として2つあります。いわゆる「チャプター・セブン(破産法第7章破産)」(以後「第7章破産」と呼ぶ)と「チャプター・サーティーン(破産法第13章破産)」(以後「第13章破産」と呼ぶ)です。第7章破産の場合、個人またはビジネス実体として申請でき、期間としては3ヶ月から6ヶ月位継続します。第7章破産は、いわゆる「清算破産」であり申請者の必須資産以外の資産が売却されて負債の支払いに充当されます。つまり、通常は3ヶ月から6ヶ月の破産手続き期間が終了すると債務者は負債から解放されます。
第13章破産は、いわゆる「更正破産」であり、給料から天引きされるような形式で比較的長期間にわたって債務を返済します。通常、この種類の破産期間は、3年から5年です。
第7章破産の場合、申請者は裁判所に出向き申請料を支払い、書類に必要な情報を記入することにより簡単に手続きを行うことができます。記入する項目は、資産、所得、負債額、月々の生活費、資産の内手元に残すことを許されているもの、過去2年間に売買した資産、過去2年間に所有した資産および費やした額などです。第13章破産の場合、申請者は自分の所得の中から長期間にわたり負債の返済をします。ほとんどの場合、この種類の破産手続き期間は少なくとも3年間かかります。負債額が極めて多額である場合や一定の定期的な収入がない場合などは、第13章破産の申請をして受理されないこともあります。手続きは第7章破産と同様裁判所に出向いて申請料を支払い必要事項を書類に書き込むことから開始されます。裁判所が毎月の返済額を承認すると、それに従って毎月の返済を実行します。
第7章破産の場合も、第13章破産の場合も、その目的は過大な債務を抱えて生活が成り立たなくなった人々を救済するためですが、全ての債務が自動的に解消されるわけではありません。破産によっても解消されない債務の例としては、学生ローンなどがあります。学生ローンの場合は、貧困などのために「返済を継続することにより債務者に極端な困難をもたらす」と裁判所が判断して特例除外しない限り解消されません。(解消の対象となるのはごく希な例です)一般的に、連邦、州、郡、市などの税金が滞納となっている時、ほとんどの場合債務が解消されません。例え債務が解消されたとしても、資産が担保となっている場合や差し押さえの対象になっている場合には、単に破産手続きが認められたというだけではその状態が解消されないために、実質的には債務を完済しない限り問題は解決しません。離婚後の子供の養育料や元配偶者への扶養料なども多くの場合破産により帳消しにすることはできません。
婚姻期間中にできた債務(夫婦の共同財産制の州では債務は両配偶者に返済義務がある)は、離婚後も両方の元配偶者に返済義務が残ります。債権者は、どちらからでも取り立てることができ、片方の債務者が返済を拒否したり、貧困のために返済が不可能である場合には、返済可能な方が全面的に返済しなければならないような状況もあります。このような場合にも、破産を申し立てることによって簡単に返済義務を逃れることはできません。離婚時に資産の分割の条件として、他方の配偶者が負債の大部分について返済義務を負うという条件の下で、一方の配偶者が本来なら分割請求権利を有する一定の資産に対する権利を放棄する場合があります。このような場合、資産の大部分を債務返済の義務を負う条件と引き替えに得た一方の配偶者は、その後破産を申し立てることによって返済義務を逃れることはできません。
その他にも、政府機関によって課された罰金、裁判所に支払いを命令された諸費用、罰金、賠償金なども破産により回避することはできません。この中には、飲酒運転により財産破損や人身事故を起こし、被害者に対する弁償金・賠償金の支払いを命じられている場合なども含まれます。詐欺によって獲得した債務についても破産により返済義務を逃れることはできません。この中には、口座に残高が十分ないにもかかわらず小切手を書いて買い物をした場合、ローンを取得するために虚偽の財務情報(クレジットカードの申込書、住宅ローンの申込書、履歴書などに所得、毎月の生活費、借入金の返済額などについての虚偽の申し立てをするなど)を提供しその情報が貸し手の融資判断に影響した場合などが入ります。破産申し立ての日付から遡って60日以内に贅沢品を購入するために約1000ドル以上の借金をしたりまたはキャッシュアドバンスを受けた場合、裁判所は債務者が故意に貸し手を騙そうとしていたかまた計画的に破産手続きを悪用したものとみなします。
第13章破産の場合、3年から5年間の破産期間終了後にも残存する負債の内裁判所が帳消しの対象とできるものについては帳消しします。破産期間の初期に裁判所が決定した毎月の支払いスケジュールに沿っての返済が不可能になった時には、裁判所に申請すると支払い額や期間を再調整してくれることもあります。
破産種類の選択 
第7章破産と第13章破産を比較すると、米国の個人破産の大部分が第7章破産です。ほとんどの債務者が第7章破産を選択する理由は、この手続きが迅速かつ効果的だからです。また、第7章破産の場合、申請者は通常資産を失わずに比較的寛大な処置を受けることができます。第7章破産を申請するためにはいくつかの条件があります。1)個人(夫婦)または(法人会社でない)小規模事業主または合資会社のメンバー(パートナー)であること、2)過去6年以内に第7章破産か第13章破産手続きが開始されなかったこと、3)過去180日以内に第7章破産の手続きを裁判所が却下していないこと、4)第13章破産またはその他の方法で債務返済ができる能力があると裁判所が判断していない場合(そのような能力があると判断すると、裁判所は第13章破産への移行を指導することもある)、5)これまで債権者に対し誠意・善意をもって対してきたことなどです。
第13章破産を申請するための条件としては、1)個人(夫婦)または(法人会社でない)小規模企業主であること、2)一定の安定した所得があること、3)可処分所得があること、4)債務が一定の額を超えないことなどです。破産手続き中、裁判所は次のような優先順序で債務者に債務返済または支払いを命じます。1)裁判所の諸費用、弁護士料(弁護士を雇用した場合)、2)優先順位の高い債務(破産申請の90日以内の期間に雇用された従業員へ支払うべき給与や同期間に支払義務が生じたその他のビジネス上のコミッション)、従業員のための社会保険の雇用主負担分、税金、離婚後の子供の養育料などは100パーセント支払います。3)住宅ローンに関しては、自宅をこれまで通りに所有し続けたい場合、未払いの分を100パーセント支払います。4)その他の担保付き負債(自動車ローンなど)もこれまでに未払いとなっている部分を100パーセント支払います。5)無担保の債務(クレジットカード・ローンなど)は、どの位の処分対象資産が残っているかおよび月々の所得(特に可処分所得の額)により0パーセントから100パーセントまでの割合で返済されます。破産申し立ての効果
破産を申し立てると、裁判所は自動的に債権者に対して一定の制限を加えます。まず、一定の期間取り立て活動を停止しなければならなくなります。取り立ての手紙や電話を止めることができるわけです。破産者に対して新たに訴訟を起こせなくなります。また少なくとも一定の期間、電気やガスなどの公共サービスを止めたり、生活保護をうち切ったりできなくなります。新たに担保権を設定したり、財産や預金の差し押さえ手続きを取ることもできなくなります。住宅ローンの滞納に起因する譲渡抵当実行手続き(foreclosure)も一時的に停止されます。このような禁止に反して債権者が取り立てやその他の行為を強行しようとした場合、破産者は裁判所に対して、債権者を「法廷侮辱罪」で罰するように要請できます。しかし、破産を申し立てた後も、子供の養育料や元配偶者への扶養費の取り立ては停止されません。
破産を申し立てると、破産手続きが開始されますが、破産手続き継続中は破産管財人が財産の管理を行います。この管財人は裁判所が任命し、裁判所はこの管財人を通して破産者(債務者)と債権者との関係を調整し、コントロールします。優先順位に従って債務の返済を計画実行するのも破産管財人の役割です。破産を申請した債務者は、この破産管財人に必要な書類を全て提出します。
保証人になった場合
日本でもよく「保証人になったために財産を全て失った」などという話をよくききますが、同じような危険は米国の場合にもあります。夫婦でなくても、ローンの申し込み書に共同署名したり、「保証人(Guarantor)」として署名すれば主たる借り手と同様の返済義務が生じます。注意しなければならないのは、共同申込者や保証人となって保証した相手が破産した場合です。第7章破産の場合、特に破産の申請者が「破産手続き終了後も返済義務を負う」という意思表示をしない限り、借入金の返済義務は保証人に全面的に課されることになってしまいます。第13章破産の場合、共同署名者や保証人の返済義務も破産手続きに含めることにより両当事者をある程度保護することができます。
次回は、例を挙げてより具体的に破産の効果と制約についてより詳細に見てみましょう。自己所有の自宅などがどのような取り扱いを受けるかというような問題についてアリゾナ州におけるホームステッド法(家産差し押さえ免除法)の原則とも関連させて考えてみましょう。読者の皆様から特に具体的なご質問があれば調査して回答いたします。