2011年を振り返ると、やはり3月11日に日本の東北地方で起こった地震・津波、特に福島第一原子力発電所でのメルトダウンとその後の放射能問題が心に重く圧し掛かります。そして世界中を見渡すと、不況は改善の兆しを見せず、EUにおける債務問題、米国経済の不調、失業率の高止まり、日本の苦難、中国におけるバブル崩壊の兆し。。。となかなか楽天的な気分になれないというのが大多数の方々の心境ではないでしょうか。

しかし、それでも2012年がより良い年となりますようにと祈らざるを得ません。あまりにも沢山の不安要因を抱え、状況が悪かった2011年の次の年ですから、上向き改善に向かう他ないのではと思う希望的観測も多少あります。

路上における物売り・物乞いなど(solicitation)を禁じる条例を憲法違反と判断

年の暮れの常で、寄付金依頼のNGOなどからの手紙が多数郵便受けに入っていたり、町に出ると救世軍の寄付集めなどに出会います。また2011年は米国で「貧困層」に属す人たち、フードスタンプでやっと食料を買う人たちの数が増大したというニュースもありました。ホームレスの人たちがマクドナルドの紙カップを前に置いて地面に座り「どうぞお金を」と待っている姿はどの都市に行っても見かけます。

今回は、路上における寄付を願う人たちに関係する最近アリゾナ州の控訴裁判所とカリフォルニア州第九巡回控訴裁判所が出した二つの判決について見てみましょう。まずアリゾナ州控訴裁判所の判決ですが、フェニックス市が1966年に市民や市内のビジネスを守るためとして制定した「市内における物売り・物乞い禁止条例」について少なくとも「日没後のそれらの行為を禁止する条項」は憲法違反として無効と判断しました。フェニックス市は1966年の当該条例制定の後、2003年には「日没後に押し売りや物乞いのために通行人に声を掛ける」ことを禁じる条文を追加しましたが、この部分も含め市条例による禁止の範囲が広すぎて明確でないという理由を挙げ、言論の自由を保障する憲法修正第一条に違反するもので違法という判決でした。判決理由としては、公共の場(路上)における言論の自由は憲法で保障されている、政府がこのような言論の自由をコントロールする能力は制限されるべきものであるとしています。すなわち政府(この場合フィニックス市)は、このような言論の自由を制限する法律を施行する場合には、言論の自由を制限することを正当化できるような当該政府の相対的により大きな利益が存在するものでなければならないし、このような利益は不当にまた必要以上に言論の自由を奪ってはならず、フェニックス市は住民と当該地域における日没後の安全を促進することに利益があるとしても、その場で人々が発する応援の言葉、誘いの言葉などの間で何ら区別せず無差別に制限することは言論の自由の原則に反するとしました。さらに、もしこのような広範囲の禁止を合法的であるとして許すのであれば、日没後の路上での「声かけ」が全て人々に脅威をもたらすものであり、全て禁止されるべきであるということになるので、当該場所が暗闇であるかまたは照明が行き届いた明るい場所であるかを問わず、少なくとも理論的には大声でのスポーツイベントの応援、救世軍による歳末の寄付集め、ガールスカウトによるクッキーの販売などを結果として禁止することになり、あまりにも広範囲であり違法と言わざると得ないとしました。(Ariz. App. Sep 13, 2011)

この判決が出た3日後に第九巡回控訴裁判所は、カリフォルニア州ロサンジェルス近郊のレドンド・ビーチ市の条例を同裁判所自らが1986年に出した判決を逆転させて、憲法違法であると結論しました。1986年の判決では路上での物売りや物乞いを禁じるアリゾナ州フェニックス市条例を合法としました。(ACORN v. City of Phoenix, 798 F.2d 1260 (9th Cir. 1986))この判決の後一年以内にほとんどフェニックス市条例と同じ内容でレドンド・ビーチ市が条例を制定し、それを基本として、さらに路上で日雇い労働者を拾う(雇う)ことを禁じる条項を追加しました。

2004年には、おとり捜査で逮捕された労働者を代表する組織が同市を相手取って当該地の連邦地裁に「同条例は、原告の言論の自由を侵害するものであり、違法である」という申し立てを行いました。連邦地裁は原告の申し立てを認める判決を出しましたが、控訴後、今回第九控訴裁判所はこの事件を取り上げ、「同様な市条例は、言論の自由を侵害し憲法違反である」と先回とは異なった、自らの以前の判決を覆す逆転判断を下しました。判決理由としては、レドンド・ビーチ市条例が「労働者が一定の路上に集合して求職することを止めさせ、市民の安全や市を清潔に保つ」ことを目的としていることは理解できるが、そのような地域限定的な問題解決という目的のために市内全域で同様・同程度の路上での活動の制限を法制化することは目的に比して過剰な言論の自由の制限となり、理論的には家の前でレモネードを売る子供たちの行動をも規制してしまう結果になるものであり、広範囲過ぎ、違法であるとしました。(Comite de Jounaleros de Redondo Beach v. City of Redondo Beach, Nos. 06-55750 & 06-56869 (9th Cir. Sep. 16, 2011) )このように自らの以前の判決を覆すというのは異例のことですが、この逆転判決は、フェニックス市条例に関するこれまでの判例にどのような影響を与えるのでしょうか。単純に言って、上記のアリゾナ州控訴裁判所の判決と今回の第九巡回控訴裁判所の判決を合わせて考えると、フェニックス市条例は憲法違反ということになると考えるのが自然でしょう。しかし、前者は主として「日が暮れてからのSolicitationを全面的に禁止するのは憲法違反」とした判決ですから、1966に制定された市条例が全面的に違法とされたわけではありません。控訴裁判所の判断ではACORNの判例は否定されたことになるので、フェニックス市条例は憲法違反であるとされたと考えることができます。実際の運用がどうなるのか、今後の成り行きが注目されます。

(この記事を書くに当たり、Maricopa Attorney 2011年11月号ページ1と15に掲載されたDaniel P. Schaackの記事を参考にしました。)