特別秘密保護法の施行


みなさま新年おめでとうございます。

2015年がより良い年となりますようにお祈りします。今年もよろしくお願いいたします。

さて、新年早々なんとなく不安な話で恐縮ですが、2014年12月10日に日本で施行となった特定秘密保護法の話をしたいと思います。この法律は、長期にわたる議論を経ることなく、比較的簡単に与党自民党と公明党の多数支持により成立したものでした。そのような背景であるために、この法律の内容や運用について詳しく知る人も比較的少ないでしょう。私もその一人です。

今回私がこの法律について「えっ」と驚いたのは、この法律の運用を管轄することになる内閣情報調査室が同法適用の対象となる特定秘密の保持に関わる公務員(約6万5000人の公務員、2万9000人の都道府県警察職員)と契約業者などを含む民間人(約3300人)の「適性」を評価するための基準について議論した際に示した「懸念される項目」が共同通信の情報開示要求により明らかになり、その内容について「国際結婚を考える会」の会員間でオンラインでの議論が起こったことをきっかけにしていました。(東京新聞12月11日朝刊記事「プライバシー侵害の恐れ、秘密扱う「適性評価」」)

なんと懸念の対象として、当該公務員・民間人の学歴(高校から)、精神疾患の歴史などと共に配偶者、こども、配偶者の父母のや血の繋がりがない子どもなども含め過去の国籍も調べ、調査後に外国人と結婚した場合は上司に速やかに報告することを要求する、また「外国との関係で直ちにスパイやテロとの関係があると判断するわけではない」が一方で「家族の過去の国籍の情報機関等がスパイやテロへの関与を働きかける可能性も否定できない」として調査の必要性を強調したと報道されています(同上)。

東京新聞2014年12月8日朝刊記事「海外経験者は「秘密を漏らす」内閣情報調査室が強調」というタイトルの記事中の「海外で学んだ経験や働いた経験があると、国家機密を漏らす恐れが高まる」という意味の記述もあったという部分を読み、仰け反るほど驚いてしまいました。これって「本当の話?」、内閣調査室ってどんな人たちで構成されれいるの?呆れてものが言えないというのはこのようなことかもしれないとも思いました。海外で学んだり、働いたりした経験がある人たち?それって私のこと?とショックを受けました。私の周囲にはそういう人たちが多いし、そのような経験をしたことがある日本人を数えたら、延べ数で数百万人に達するのではないかと思います。内閣情報調査室という政権の中枢を占める人たちの考え方の一端を覗き見て「恐ろしいもの」を見たという感想を持ったのは私だけではないと思います。このような見解は2011年11月に内閣情報調査室が示したものとされていますが(同上)、この海外経験の有無という懸念項目は、借金や薬物乱用、飲酒時に頻繁にトラブルを起こすというような事例と並べて懸念項目として挙げられているということです。海外の学校や国内の外国人学校で教育を受けた経験、外国企業での勤務経験を持つ者は「外国から働きかけを受け感化されやすい。外国の利益を優先し、機密を自発的に漏えいする恐れが存在する」としているということです。(同上)

先に述べた家族などの過去の国籍などの調査内容を考えると、留学したり海外で働いた上に外国人と結婚したいわゆる「国際結婚した者」またその子や孫などは自動的に嫌疑の対象となることになるわけで、例え公務員でもなく、警察関係でもなく、国家機密に携わる民間契約業者やそのような企業に働く者でないとしても、それらの者の家族である可能性もあるわけで、約10万の直接的に同法の適用対象者でとなる人々の他にもそれらの者と血縁関係、婚姻関係、姻戚関係にある者たちも数に入れれば、相当膨大な数の人々をこのような「機密を漏らす恐れがある者とそうでない者」に区分けすることになります。このようなシステムは多くの意味で人権侵害や差別(就職差別、昇進差別その他)を奨励・増長させる可能性が大です。このような区分け、差別をすることにより、海外留学や勤務経験者は国家機密を扱う公務員には向いていないというような判断がまかり通ることになりかねないし、そのような判断基準が広く知られることになれば、国家の中枢で公務員としての勤務を夢見る者は海外留学や勤務などは極力回避するというような風潮も出来かねません。

それぞれの国がグローバル化する過程では、逆にこのような時代錯誤的な分別・差別意識が高まるのだろうかと呆れると同時に恐れを感じざるをえません。

同記事では、意見を求められた外務省が「グローバル化が進む中、こうした事情(海外での生活経験)を抱える職員は今後ますます増加する」「大多数は外国の利益を優先する恐れが特段見受けられないと判断しうる」と反論したと述べています。(同上)これは外務省としては当然のことでしょう。外務省に勤務する者は多くが外国留学経験を有しており、また外国で働いた経験(外国企業ではないとしても)があります。それをもって「機密を漏らす恐れがある」と一括りにされたのでは立つ瀬がありません。

最近は日本から外国に留学したり外国で働くことに憧れたり実際に留学や外国勤務をする若者たちが減少しているという報道を目にすることも多いのですが、こんな「適性評価」が行われていることを知ったら、ますます留学や外国勤務を忌避する若者たちが増えてしまうのではないでしょうか。日本の中で人々が内向きにのみ生きようとすれば、日本という国そのものがグローバル化する世界の中で生き残ることも危ぶまれる可能性を考えると、理解しがたい動きや考え方が日本政府の中枢にあるということに驚きを感じます。年末の慌ただしい中での衆議院選挙に「大勝」し(選挙そのものは投票率が史上最低だったということですが)、民意を得たと確信する阿部政権が丁寧に議論することなく大きく政策転換するかもしれない2015年、なんとなく不安に感じる人たちは世論調査を見ても多いようです。「特定秘密」が具体的に何を意味するのか、その範囲についても、明確に定義されていないままに実施された特定秘密保護法、今後注目して行く必要があります。