18才選挙


皆さま新年おめでとうございます。早くも2016年1月を迎えました。今年も皆さまにとって良い年でありますよう、お祈りいたします。

さて、2016年には、日本ではどのようなことが起こるでしょうか?さまざまなニュースがある中で、選挙年齢引き下げについてのニュースが関心を呼んでいます。

2016年6月19日に大きな変化が起ころうとしています。選挙年齢を現在の20歳から18歳に引き下げるための公職選挙法等の一部改正法案なるものが2015年6月に成立し、1年後の2016年6月19日から実施されることになりました。また遡って2014年6月には憲法改正国民投票法が公布され、実施から4年後(2018年6月)以降に国民投票が行われることになれば、有権者は今回の改正もあり、18歳以上の有権者が投票することになります。国民投票の場合は、法成立のためには最終的に投票者の50パーセント以上の賛成を必要とします。

国民の内誰が公職候補者に対して投票できるかという規則であります選挙法は1890年に最初の法律が成立して以来変遷を重ねてきました。この1890年の法律によると、納税額が年あたり15円以上であった男性が選挙権を与えられました。これは人口の約1パーセント位であったということです。1900年にはこの法律が改正され、年あたり10円以上の納税者男性が選挙家を得ました。これにより、人口の約2パーセントが選挙権を有することになりました。その後第二次世界大戦後の1945年になると、それまで25歳以上という年齢制限があったところ、20歳以上に改正され、さらに女性にも参政権が認めらるようになりました。その後70年間20歳以上の男女に与えられてきた選挙権は2015年に改正され、20歳以上という条件が18歳以上という年齢に引き下げられたのです。

18歳から20歳の人々が選挙権を得ることは、最近は高齢者の人口が若年層の人口に比較して多い、そして投票率も高齢者の方が高いという事実(「シルバー民主主義」と呼ばれる)を考え合わせると、さまざまな意味を持つ可能性があります。今回の改正により、人数としてはどの位の数の有権者が増えることになるのでしょうか。約240万人が新たに選挙権を得ることんいなり、これは全有権者数の2パーセント増加をもたらすことになるということです。

これらの人々が新たに有権者になるということは何を意味するでしょうか。政治の大勢に大きな影響を与える程の力となり得るのでしょうか。もし影響が大きいとしたら、どのような方向に影響が出るのでしょうか。保守化に力を貸すことになるのでしょうか。または若者独自の革新性をもたらすのでしょうか。またはほとんど影響がないということになるのでしょうか。

今回の法改正は、私もそうですが、みなさまの中にも「唐突に行われたがなぜか」という疑問を抱かれる方もあるでしょう。なぜ今、そしてあまり議論を深めることなく、自民党と公明党との協力関係に基づいて国会で多数派を占める与党が優先的にかつ速やかにこの法改正を行ったのでしょうか。こんな疑問が浮かんできます。

若年層の有権者たち(20代)はこれまでどのような投票行動をとってきたのでしょうか?2014年の選挙を振り返ると、20代の有権者のうち三分の一ほどしか投票しなかったというデータもあります。J-Cast News (2015年10月30日)によると、2014年12月の衆議院選挙の際は、70-74歳の年齢層の有権者の72.16パーセントが投票したのに対して、20-24歳の有権者の29.72パーセントが実際に投票したということです。与党としては、2016年の夏に予想される参議院選挙またその先に予想される憲法改正のための国民投票のための準備として若年有権者の数を増やそうとしたのだという議論もあります。しかし、選挙権を与えられても新たに有権者となった若者たちの少数しか投票しないのであれば、そのような目的が達成できるか疑問です。現時点では、これらの新たに有権者となる18歳から20歳までの若者たちの投票行動が予測できないため、彼らが日本の政治にどのような影響を与えるのか、また影響があるのかないのかという疑問には一向に回答が出てきません。

上記のデータが存在する反面、オンラインの調査などでは、18歳選挙権について、18歳から20歳までの新たな有権者層の意見をきいたところ、回答者の約70パーセントが投票すると回答し、また政治や政策課題に対して64.2パーセントが関心があると回答したというデータもあります。支持政党については、支持政党なしというのが約49パーセント、自民党22.6パーセント、民主党13.2パーセント、維新の党5.7パーセントというデータもあります。これらのデータは、直接投票行動を予測する要素にはならないでしょう。

一方選挙権を新たにあたえられるはずの240万人のうち7万人が、公職選挙法の不備を原因をして実際には投票できなくなる可能性もあるという報道もあります(Yomiuri Online 記事2015年12月23日)。今回の改正は、投票権を与えるという側面のみの改正であり、被選挙権に関しては改正していませんので、候補者となるためには依然として25歳以上でなければならないという条件が残ります。参考までに、世界の50か国以上において18歳以上の国民に被選挙権が付与されています。これらの国では18歳以上の国民は、有権者として投票できると同時に、候補者として公職に立候補できるのです。このような比較をすると、日本の改正は、バランスがとれたものとは言えません。またいわゆる「成人」となる年齢を全ての側面において法改正したというわけではありませんので、有権者としては成人扱いされ、刑法上その他の側面では依然として未成年者として取り扱われるという奇妙な状況を生み出します。今回の法改正が、だれかの都合で、だれかに有利になるように慌ただしく行われたという印象を与えるのも不思議ではありません。

日本の今回の法改正は、世界の選挙権年齢の趨勢を見るとどのような位置を占めるのでしょうか。Wikipediaによると、オーストラリア、キューバ、キルギス、ニカラグア、ブラジルなどは16歳以上の国民が選挙権を有し、日本、アイスランド、米国、アイルランド、イギリス、フランス、インドなど162か国において18歳以上の国民が選挙権を有し、イギリス、ドイツなどでは現在選挙年齢を16歳に引き下げることを検討中ということです。

今回の改正について、一部の高校生が選挙権を得るという事実もあり、高校教育の一環として新たに有権者になる者への教育という側面も考慮されることになりますが、教育の現場でも多少混乱が予測されているようです。これまで、高校教師たちは政治的には厳正中立であることが要求され、非政治的であることを求められてきましたが、同時に教育内容としては「平和主義」、「民主主義」、「立憲主義」を大切な原則として授業を進めてきました。その中で、最近のいわゆる「安保法案」の成立をめぐる政府当局の動きまた法案そのものの内容などに関して、また新たに有権者となる意味などについてどのように教育現場で取り扱うのかということが問題になっています(ニュースサイトハンター2015年9月25日Online 記事)。今後憲法改正国民投票にも参加することになる可能性がある新しい有権者となる若者たちにこれらの議論について非政治的でありながら、教えるというは至難の業でしょう。

今回の法改正を積極的に推進した当事者たちにとって、新たに240万人の若者たちが有権者となるという事実は、現在のところは、「両刃の刃」となる可能性を秘めているようです。政府与党が望む投票行動をとってくれるのか、実際の選挙や国民投票が実施されてからしかわからない「神のみぞ知る」領域に属すことなのかもしれません。興味深いところです。