回教徒登録監視システム


2017 年、明けましておめでとうございます。

2016年11月の選挙の結果、今年1月にはトランプ大統領が登場することになりました。政権担当政党も民主党から共和党に交代することになります。選挙当日には「え、本当?」と世界中で信じられない思いをしていた人たちも多くいましたが、トランプ政権はいよいよ現実味を帯びてきました。これから少なくとも4年間これまでとは全く異なる政策が多く飛び出してくる可能性が大となったわけですが、すでに具体的にいくつかのトピックが注目を集めています。

日本の安倍政権が期待していた米国でのTPPの批准と関連国内法の成立は、トランプ氏が選挙戦中から明確に反対意見を表明してきており、共和党が多数を占める議会(上院・下院のどちらも)でもこの国際協定の批准は絶望的となっています。

もう一つ別のトピックとしては、これもトランプ氏が選挙戦中複数回にわたり触れた「回教徒の登録監視システム」の樹立を挙げることができます。彼が実行しようとする登録監視システムが具体的にどういう内容なのかについては彼自身も明確に述べておらず不明のままです。

このトランプ版回教徒登録監視システムと関連がありそうなのが、ブッシュ大統領時代の大きな出来事であった9.11の後2002年9月から2011年まで約10年に亘って実施されたNSEERS(National Security Entry-Exit Registration System)です。当時起こった米国に対するテロ実行犯たちの出身国または将来類似のテロリストを生み出す可能性がある回教徒が多数派を占める諸国および北朝鮮(全部で25か国:アフガニスタン、アルジェリア、バーレーン、バングラデシュ、エジプト、エリトリア、インドネシア、イラン、イラク、ジョーダン、クウェート、レバノン、リビア、モロッコ、オーマン、パキスタン、カタール、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエーメン、および北朝鮮)から米国VISAを得て訪れる人々(特に16歳以上の男性)を特別な枠組みで登録しある程度管理することにより米国に対するテロリストの攻撃を防ぐかまたはそのような攻撃の頻度を少なくしようとする試みでした。2002年に開始されたこのシステムは、その後オバマ政権下で「目的とする効果がない」、「人種差別的な取り扱いを推進する」というような理由により2011年には全面的廃止ではないものの実施停止の状態にされたままになっていました。

オバマ大統領は、この停止状態になっているシステムをトランプ次期大統領が大統領就任後に即時再使用できないように12月23日にシャットダウンするという記事が2016年12月22日付で出ました。(Web版Vox 2016年12月22日記事)。この「シャットダウン」するという言葉は何を意味しているのでしょうか。実施停止中であってもシステムそのものが存在していれば、トランプ次期政権がこれを基盤に新たなデータを入力しつつシステムそのものをの使用を再開することは可能でしたが、今回の完全廃止(システムシャットダウン)とそのシステムの存在を規定する法律そのものを廃止することにより、そのまま再使用する可能性はなくなったということのようです。トランプ次期大統領が同一のシステムを再樹立しようとした場合、新たに法的基盤を築き少なくとも形式的にはシステムを再構築する必要ができたことになります。つまり、既存のシステムを使用・再起動することがより困難になったといえるでしょう。

大統領選挙キャンペーン中、トランプ次期大統領は回教徒の米国への移民を一時的に中止する、また回教徒を登録し管理するという政策を実施することを約束しました。この回教徒登録を彼が本当に実施しようとするのか、またこの「回教徒」という言葉が何を意味するのかも明確ではありません。すでに米国内に居住する回教徒という意味であれば米国市民である回教徒も登録を要求されるのか移民のステータスの者のみを登録しようとする意図なのか、この辺も明確ではありません。米国市民を含めて回教徒の登録をしようとすれば、宗教や出身国による差別として、憲法違反また人権侵害の側面から多くの訴訟が起こされることになるでしょう。

過激な言動で世間を騒がし続けた末に大統領選に勝利した(得票数ではクリントン候補が280万票ほど上回ったということですが)トランプ次期大統領、1月末に政権発足後、どのような政策を優先的に実施する予定なのか、極端な発言を繰り返していた政策を実際にどこまでまたどのように実施しようとするのか多くの人たちが固唾をのんで見守っていることでしょう。2017年が良い年でるよう、祈る他ありません。