遺伝子操作作物


今回は、モンサント社等によるいわゆるGM(Genetically Modified-遺伝子操作された)作物の耕作を禁止する判決をメキシコの裁判所が出したという、読んでみてあっと驚いた記事について書きます。みなさまご存じのとおり、GM農作物はモンサント社などを中心に米国でも大流行、特に大豆やトウモロコシなどは、最近ではほとんどがGM系であるといわれています。以前にも記事にしましたように、米国ではGM作物やその加工物を原料として加工食品などを製造販売してもラベルにGM系の原料を使っていることを表示する法的義務はありませんので、消費者は知らないうちに大豆(豆腐やみその原料)やトウモロコシ(いろいろな加工食品に使われている)を食している可能性が高いのです。

「GM作物やそれらを原料とする加工食品はラベルでその事実を表示すべきである」と法律を変えるように一部の消費はは運動していますが、現在のところその勢力は法改正を実現するほどには強くなっていません。そして、GM関連食品は「安全である」とする米国政府のお墨付きを得て、国内では推進されています。またオバマ政権は、「輸出振興」の一部としてGM作物の種、収穫物、それらが原料として含まれる加工食品などを米国から外国に輸出することに大変熱心です。その意味では、政府自らがモンサント社などのGM系作物の特許所有会社を全面的に支援しているという構図になっています。

これに対して、世界中の諸国では、その勢力の大きさは千差万別ではありますが、一定のGM作物・種などに対する反対運動が存在しており、時々、「世界各国で連動した反モンサント社デモが起こった」などという報道も目にした方もあるでしょう。

ヨーロッパでは、GM作物の植えつけ、GM系加工食品を禁止している国が多いようです。フランスなどは特に農民の反対も強く、禁止されている状況です。そんな中で、メキシコの連邦裁判所がGM作物(トウモロコシ)植えつけ一時差し止め(禁止)の判決を出したというニュースは、驚きでした。これは今後、世界の各地で起こることの前兆か?と思ってみたり、またメキシコは相当特殊なのだろうかと考えてもみました。

Devon G. Pena氏による2013年10月11日付けの記事「Judge Rules that GMOs Are Imminent Threat—Monsanto, Pioneer, Prohibited From Marketing Transgenic Seed 」によると、La Coperachaというメキシコ国内のグループのプレス・リリースを引用して同国メキシコ市にある第12連邦地裁民事担当Jaime Eduardo Verdugo J. 連邦判事が「即時国内のGMトウモロコシの植え付けに関する全ての活動を停止し、実験およびパイロット・プロジェクトとしての植えつけも含め許可を停止する」という命令を出しました。判決は多国籍企業であるモンサント社およびパイオニア社はメキシコの農村部においてGMトウモロコシを販売することについての禁止条項も含むものでした。この裁判所命令は、全面的にGMトウモロコシの存在、植えつけ、販売を永久に禁止するという命令ではなく、現在メキシコ国内で起こっている市民、農民、科学者、その他の団体が起こして係争中である複数の裁判の判決が出るまでの「一時差し止め命令」ではありますが、その効果は重大と思われます。これらの訴訟の当事者である諸グループ「Accion Colectiva」などは、「基本的人権」の重要な部分として生物多様性の宝庫であり、トウモロコシの原産地であり、約2万種の異なるトウモロコシ原種が国内各地で栽培されているといわれるメキシコの市民・農民たちがそれらの伝統と多様性を「多国籍企業等の利益」のために犠牲になることなく今後も保護して行けることを目的としています。GMトウモロコシをメキシコに導入し推進しようとする企業・当局などを「犯罪者」として告発するという側面ももっています。今後、これらの複数の訴訟(集団訴訟)の行方が注目されます。

さて、GM関連の最近の米国内ては、これまた「ほう」と思ったニュースがあります。

Whole Foods, Trader Joe’s, SafewayおよびTargetなどのチェーン店が「GMサケを取り扱わない」と宣言したという記事がでました(「A New Method against Genetically Modified Salmon: Get Retailers to Refuse to Sell It」、Washington Post Web Version 10月20日記事:Health & Scienceセクション)。GM関連食品を禁じる法律を成立させたり、政府の政策を変えることは容易ではありませんが、一部の市民運動グループ(Friends of Earth, Center for Food Safety, Consumers Unionなど)は、それよりそれらの食品を販売する小売業者に圧力をかけ販売させない結果を出す方がより効率的であると判断したようです。各種ソーシャルメディアなどを駆使した消費者からの直接のプレッシャーも小売業者相手の方がより効果的との判断でしょう。この記事によると米国政府の食品や薬品の安全性などを規制するFDA当局は、植物ではなく動物では初めてとなるサケのGM版販売について、「GMサケは環境に悪影響を及ぼさないし、通常の大西洋で捕獲されるサケと同じに安全である」と宣言し、許可する方向性をこれまで示してきたということです。しかし、大手の小売業者が「GMサケは取り扱わない」という方針を強めて行けば、消費者の間の評判は芳しくなくなるでしょうし、市場で実際にこれらのGMサケを大量に販売することは難しくなるかもしれません。結果として、「製造業や販売業者」にとっては許可は出たが利益率を考えると経済性がない。。。という状況に至る可能性が出てくるでしょう。ある意味では裁判を起こしたり、法改正の運動をしたりするより、労力、お金、その他の面でより効率的な方法でGM食品への反対運動を展開できるかもしれません。

サケの「巨大化」(成長ホルモンを大量に使用)などより効率の高い、またより大量に魚肉を提供できる「夢の技術」としてGMサケの研究に努力してきた当事者(日本が先進国)にはお気の毒かもしれませんが、最終的にこの「夢の技術」が世界の市場で大人気を博し、世界の食糧事情改善に大貢献するという夢は実現するか否か未来が明確ではありません。

今回は、GM関連食品についてのメキシコと米国での動きを追ってみました。日本、ヨーロッパ、その他の世界の各地ではどのような展開になっているのか大変興味があります。
私自身や、GM関連食品はできるだけ避けるようにしています。そして、やはり、消費者がラベルを読んで判断できるように、GM食品を含む加工食品についても詳しく成分項目をラベル表示するようにしてもらいたいと思っています。みなさまはどう考えられますか?