国際孤児養子縁組

昨年暮れに起こったスマトラ沖地震は、世界中にショックをもたらしました。ニュースによると、世界中の一般市民が国家レベルの寄付を超えんばかりの勢いで津波の犠牲者救援義捐金をインターネットその他の手段で寄せ続けているようです。皆様の中にもすでに寄付をなさった方々もあるでしょう。被害の全容が次第に明らからになるにつれ、亡くなられた方々の数は25万以上というような現時点での推定値がでてきています。
特に心を痛める関連ニュースは、犠牲者の半数以上が子供たちであったであろうという推定と、数十万のレベルで両親を失って孤児になった子供たちが存在するというニュースです。さらに、これらの子供たちを狙って「人身売買」組織や個人の「人買い」が暗躍しているらしいという噂には、呆れるばかりです。しかし、現実にインターネットなどで「津波による孤児養子縁組斡旋」などというサイトも登場しており、携帯電話にランダムに「孤児を斡旋します」などというメッセージが入ってきたというような例も、災害現場で救助・復旧作業に従事しているユニセフなどの国際機関の人々にさえ起こっているようです。
今回は、関心が高まっているといわれる国際孤児養子縁組について取り上げてみました。津波の被害についての報道が開始されると、間もなく津波により孤児になった子供たちを養子縁組して米国に連れてきたい、という要望・問い合わせが多く出たようです。現在のところ、孤児たちを上記のような国際人身売買から保護のため、被害国であるスリランカ、インドネシア、タイ、インド、マレーシアなどの国々は一時的にこれらの子供たちが国際養子縁組も含め理由の如何を問わず移動することを禁じています。場合によっては、同一国においても、別の地域への移動も禁じています。これらの国々は一般的に、上記の人身売買の危険とは別に文化的・宗教的理由から他国への孤児の養子縁組には比較的消極的であり、養子縁組が行われる場合にも、時間を掛けて慎重に対処しています。例えば、マレーシア政府は、同国の孤児に関し、申請者が同国の多数派宗教であるイスラム教徒でない限り養子縁組を禁止しています。これらの国々では今後1年位の期間は、被害地域からの国際養子縁組が全面的に禁止されるであろうと予想されています。その後は、慎重に調査した結果「孤児であることが明確に判明した子供たち」については、米国など他国への養子縁組の道が開かれる可能性があります。
米国人による孤児の国際養子縁組
孤児を養子にしその孤児の米国への入国を申請できる資格としては、米国籍の独身者、または結婚している場合は米国籍を有し配偶者が米国籍者または米国内で適法VISAにより生活している者である必要があります。結婚しているが配偶者と別居中の者の場合、当該配偶者と共同で申請する場合のみ有資格者となります。
養子縁組の対象となる「孤児」の定義は、両親が死亡または失踪したため、または両親により遺棄されたため、または両親が行方不明であるために孤児となった外国の子供たち、または唯一または生存する親のどちらかが当該国における現地の標準的な基本的必要を満たすことができず、その子供が国際養子縁組の対象となり国外に出ることを撤回不可の書面により許可する場合を意味します。国際孤児養子縁組が許可されるためには、通常当該養子縁組をその子供が16歳になる以前に申請する必要があります。例外として、兄弟姉妹で同一家族の養子になる場合には、一方の子供の年齢が18歳まで延長されます。
有資格者により国際養子縁組が申請されると、米国の移民局(USCIS)は申請者が国際養子縁組を行うに相応しい適応性、知的・感情的、経済的能力を有するか否か判断します。また、それ以前に申請者の家庭において児童虐待が起こった記録が存在するか否か調査します。また申請書が対象孤児の生活する外国所在米国領事館に到着すると、孤児についても実際にその孤児が米国法による「孤児」の定義に適合するか否か、また申請書に記載された以外の障害や疾病を有していないか否か調査します。これらの調査の結果、要求基準を満たしている場合にのみ国際養子縁組が許可となります。
上記の方法により外国内で養子縁組が正式に成立した孤児に関しては、多くの場合米国に入国すると同時に自動的に米国籍を取得します。米国籍取得の証明として、「米国市民証明書(FORM N-600)」をUSCISに提出して証明を得ます。養子縁組の後、継続して当該外国に滞在する場合、後のある時点で米国に入国する時にFORM N-600Kを使用して帰化申請手続きをする必要があります。この場合、帰化申請は当該孤児養子が18歳になる前になされなければなりません。
より迅速な国際縁組
上記の方法は、一般的な手続きですが、より迅速に国際養子縁組を行うためには、事前に手続きの一定部分を行う方法もあります。通常の手続きは、養子縁組の対象となる特定孤児が見つかった後に手続きが開始されますが、この「特急」手続きでは特定の孤児を見つける以前に事前手続き申請書を提出し、その後養子にしたい特定の孤児を見つけ出します。この場合も対象となる子供は米国法の「孤児」の定義に適合する必要があります。この場合は、FORM I-600Aを使用し、申請者の資格証明に関する部分を事前に終了します。申請者が米国市民であること、結婚している場合は配偶者が米国市民であるかまたは合法的在留資格で米国に居住するものであることを証明します。FORM FD-258を使用して申請者(夫婦の場合は両配偶者)の指紋を提出します。結婚している場合は、その結婚を証明する書類、養子となる孤児が生活する予定の州の法律を満たしている証明、また申請者において児童虐待・家庭内暴力などの問題が過去において存在しなかった証明なども提出します。当該対象孤児が居住する外国において養子縁組が行われた場合は、当該養子縁組の証明(裁判所による決定など)の提出も必要となります。
ここでは主に米国移民局側からの国際養子縁組および養子となる孤児の米国籍取得について書きましたが、それ以外にも当該孤児が居住する外国の国際養子縁組に関する法律・手順も満たす必要があり、これら全ての手続きを完了するためには最低数ヶ月、時により1年以上にわたる忍耐強い努力が必要となります。
今回の津波の被害国からも、1年後を過ぎた頃から、米国への孤児国際養子縁組が開始されるかもしれません。すでに多くの人々が「被害にあった不幸な子供たちの力になりたい。引き取って育てたい」という善意を表明しましたが、これらの人々は上記のような多くの条件を満たし、当事国側の文化的・宗教的・社会的配慮、法的措置の全てをクリアして、初めて目的を達成することができるでしょう。
(参照文献:「津波による孤児の養子縁組に関するUSCISプレス・リリース」(2005年1月5日付け)、およびUSCISウェブサイト上の国際孤児養子縁組に関する情報)