高齢化に伴う問題

 

今回は、高齢化に伴う問題、特に身寄りのない高齢者の問題について考えてみましょう。自分も高齢者といわれる年齢層の入り口に位置するという自覚ができたせいか、高齢者の問題が目に入るようになり、また相談者の中にも高齢の方々が多くなりました。日本での遺産相続の問題(相続する側)、将来における自分の財産処理・医療の問題(相続される側、面倒をみてもらう側)、それらの組み合わせとして相談を受けることもあります。
次第に高齢になり、親、兄弟、親戚も亡くなり、子供もいないというような、いわゆる「身寄りのない高齢者」の境遇になってしまう方もあります。他人事ではなく、現在配偶者や親戚がいる者も、成り行き次第では「身寄りのない高齢者」に誰でもなりえるといえます。信託の設定依頼を受けて信託関連書類(遺言、信託書類、リビングウィル、財務に関する委任状、医療に関する委任状など)を作成する際には、夫婦が揃って生存中にはそれぞれ相手配偶者をどちらかが死亡・無能力状態になった時点で遺言や信託を実施する者として指定します。また、配偶者が亡くなった時点で子供または親戚の者などを次の候補者として指名しておきます。しかし、指定しておく配偶者や子供、親戚の者などが存在しない場合には、どうすればよいのでしょうか。子供がいない夫婦の数も相当にあるという事実、そして夫婦のうち夫が亡くなった後も妻が生存し未亡人になる可能性が高いという統計的事実を考えると、このような状況に陥るのは女性が圧倒的に多いでしょう。実際に、そのような境遇の方の悩みを聞いてみると、親戚もいないし、子供もいないので誰か信頼できる友人に頼みたいと思っても、友人たちも自分より高齢であるかまたは同年齢であり不安である、と心配することになります。自宅を所有し、預金もあり、ある程度の財産があるので、自分の死後のことをきちんと決めておきたいという希望はあるが、どうすればよいか分からないという状況に陥ることになります。アリゾナ州法では、全財産の合計が50,000ドルを超える場合は裁判所による遺産検認(プロベート)の対象になってしまいますので、信託を設定しておくことをお勧めしますが、「身寄りがない」という境遇の場合は、どのようにすれば病気になったときの経済的な管理(日常生活に必要な支払いを行う、医療費の支払いを行うなど)、または死後の財産の処理(事前に指定した相手に財産の贈与、分配を行う、寄付行為を行う、自宅を売却する、税金を支払うなど)を誰に依頼すればよいのでしょうか。悩みを打ち明けてくださった方は、遺言を作成した際に担当の弁護士から上記のような支援を仕事として行う人(fiduciary受託者)を紹介されたそうですが、どうも「会ったこともない、または一度しか会ったことがない相手に自分の生死(医療に関する委任)および財産の全てを任せる(病気などで本人が無能力になった際、または本人の死亡後に)気持ちになれなかった」と語ってくれました。そしてそのまま数年が経過してしまったということでした。
Fiduciary(受託者)というのは、どのような役割を果たすのでしょうか。信託を設定する場合も、身寄りがなく本人が希望する場合には信託銀行、受託人サービスを提供する個人、会社、団体などに上記の経済的、医療上の委任を行うということを指定しておくこともあります。また、信託などの設定なしに、個人が無能力状態になった場合(意識がない状態が継続する、精神病にかかる、アルツハイマー病が進行するなど)、裁判所が後見人(Guardian)や財産管理者(Conservator)を任命する場合もあります。裁判所が任命する場合には、それらの後見人や財産管理者は裁判所によって資格を与えられた者に限定されます。
日本でも「成人後見人」という用語が最近よく話題になっています。米国同様にベビーブーマーが高齢層の入り口に差し掛かっている今日、すでにアルツハイマー病、その他の精神および思考的な能力に影響する病のために自らの生活や財産を自力で管理できない人々の数が増えつつあるようです。そのため、今後さらに増えるであろうこれらの能力喪失者のために、血縁関係を持たない、また友人という関係でもない、全くの他人である第三者を教育して「成人後見人制度」を充実させようという試みがあります。米国の後見人という制度は、もちろん成人のみでなく、自己管理ができない未成年の知的障害者、身体障害者のためでもあります。
裁判所により任命された財産管理者(Conservator)は、自己管理能力が無い者のために資産管理、経済的意志決定を本人に代わって行います(投資、税の支払い、資産処理など)が実施した事項について裁判所に報告する義務を負います。
配偶者、子供、親戚、友人などが受託者として信託関連書類の中で事前に本人により指定されている場合には直接裁判所の管理下にはなく、特別な資格を求められることはありません。手続き的には、もちろん事前に委任する相手を決めて信託関連書類に指定しておく方がはるかに簡単です。「身寄りがない」者でも、心がけて自分より年齢が若い、信頼できる友人を見つけることで、「委任できる人がいない」という状況を変えることができるかもしれません。

「身寄りがない者」、独身者のためばかりでなく、一般的に信託(トラスト)関連書類である遺言、リビングウィル、信託書類、医療委任状、財務関連委任状などの必要性とそれぞれの役割について解説するようにという「アリゾナ友の会」会員の方々のご要望に応え、2月18日(日曜日)の11時からのポトラック・ランチに続き1時から勉強会を催すことになりました。「アリゾナ友の会」の会員の方だけでなく、どなたでも参加していただけます。美味しい料理を一品お持ちいただくだけで、参加は無料です。誰にとっても必要な知識を身につけるよい機会です。どうぞお誘いあわせの上私の事務所(上記)までおいでください。特定のご質問がある方は、当日ご質問ください。
念のため:
信託等勉強会
1. 日時:2007年2月18日(日曜)午前11:00から
2. ポトラック・ランチに引き続き勉強会(午後1:00から)
参加ご希望の方は、「アリゾナ友の会」会長のシュワイカート愛子さん(Aiko Schweikert)さんまでご連絡ください(Tel: 480-830-8437)。
近藤ユリまでe-mailいただいても結構です(上記アドレス)