外国人が米国に滞在・居住する場合にはヴィザ(在留許可)が必要ですが、「米国で投資するという条件でヴィザを取得することは可能ですか。そしてそのための条件はどのようなものでしょうか」という質問を受けることがよくあります。今日はTreaty Investor(条約締結国からの投資家に与えられる)ヴィザについてお話しましょう。
 このヴィザは、米国と条約を締結している国(日本もそのような国の一つ)の国民が米国内で投資を行うために一時的に滞在する場合に適用されるもので、永住を目的とするヴィザとは異なります。この種類のヴィザを取得すると、後に永住許可の申請に切り替えることはできません。その意味で非移民ヴィザといえますが、このヴィザの利点は永住を目的とするヴィザの取得と比べて相当容易に取得できるということです。そして、Eヴィザの有効期限は通常5年ですが、取得の際に課された条件を満たしている限り何度でも更新できる、つまり長期にわたって米国に滞在し続けてビジネスを展開できるという点で有利です。このヴィザはまた投資家のみでなくその家族つまり配偶者と子供にも適用されます。(ただし、Eヴィザを付与された子供が二十一才になるか結婚すると、Eヴィザの資格を失いますのでF-1ヴィザ(学生ヴィザ)などに切り替える必要があります。)
ヴィザ申請の諸条件
 E-2ヴィザの取得資格を得るためには、下記の条件を満たす必要があります。
a 申請者自身が、自ら所有する米国にある会社で勤務するために米国に来るか(新しく創立する会社でも可)、または米国にある日本人が50%以上所有する会社で勤務するために米国に来なければならない。
b 申請者は、当該米国会社の所有者であるかまたは「主要な従業員」でなければならない。
c ビジネス業務を開始するために十分な額の資本を投資しなければならない。
d 当該ビジネスには、家族のメンバーが携わるのみでなく、米国市民を雇用しなければならない。
e 当該ビジネスは、日常的な営業管理を必要としなければならない。
f この種類のヴィザの申請者は、米国に永住する意図がなく最終的に米国を離れる意図でなければならない。
 それぞれの条件を詳細に見てみましょう。
50%以上の所有
 aについては、「50%以上」の所有という条件は、50%より多い場合には簡単ですが、50%である場合には、拒否権を日本側が持つことが必要となります。また50/50の意見の対立が起こった場合には、委任状などにより過半数の投票権を有するなど、最終決定権を持つ必要があります。
主要な従業員
 bの「主要な従業員」というのは、下記のカテゴリーの一つに適合する者です。
^ マネージャー
* 組織のマネージャー
* 他のマネージャーを監督するもの、または組織に不可能な機能を管理する者
* 自分が監督する部下を雇用したり解雇する権限を有するか、または、監督する部下を持たない場合は、組織内でトップの地位にある者
* 日常のビジネス上の決定を行う権限を有する者
 「主要な従業員」かどうかを決める要因としては、裁量的な決定を下す権限を持っているか、組織の政策を決める権限を持っているか、サラリーのレベルはどの位か、タイトル(部長より社長が有利など)、組織全体の中で申請者が占めるポジション、仕事の内容、会社全体のオペレーションにどの程度のコントロールを持っているか、部下の人数、会社の重要な決定を担う立場にあるか、などが判断の基準になります。
_「特別な知識を持つ者」
 これは、社内でその手続き、製品、マーケティングなどについて特定の知識を持つ者を意味します。^のカテゴリーに当てはまらない場合でも、つまりポジションが比較的低かったりまたは部下を持たない従業員の場合でも、特定の「特別な知識」を持つ者や「特別な訓練」を受けた者はEヴィザを取得できます。米国の会社内でそのオペレーションに不可欠な役割を果たす者、ビジネス上の深い専門知識、会社が所有する企業秘密などの知識を有する者がこのカテゴリーに入りますが、単に日本の文化・言語に詳しいというだけではEヴィザの申請・取得の条件を満たすことにはなりません。「米国市場で容易に入手できない」知識を持つ者、つまり訓練に長期間を要するスキルを持つ者などもEヴィザの対象になりますが、このようなカテゴリーの場合、Eヴィザの申請の根拠となる会社は、その従業員の有する知識やスキルが「米国市場で容易に入手できない」ことを証明する義務を負います。
`「重役」
 これは、社内でトップの重役として仕事をする者を意味します。
十分な資本投資
 cについては、投資の額が十分でなければならないということですが、十分とはどれ位の額を意味するのでしょうか。
 移民帰化局(Immigration & Naturalization Service INS)がE-2ヴィザの申請を却下する場合の主な理由は投資額が少なすぎるということです。しかし、どの位の額であれば十分であるという明確な基準は、どこにも明示されていません。これまでの例から判断すると、対象となるビジネスの規模に対してどの程度の額が妥当であるかという目安で判断し、最終的には個別に裁量的な判断を下します。
 一般的にレストランであれば、どの都市でどの程度の不動産を購入またはリースし、キッチンおよび食事室の設備にいくら位投資する必要があるか、そして当初の営業を行うにはどの程度の資金が必要か、などという点を判断の対象にします。
 しかし、額の多寡だけで厳格に決めるという場合ばかりでなく、時によっては判例などから判断すると、投資額は少ないが明らかに親会社が大会社(出身国で)であり、市場の状況から十分なビジネスが期待できるので当初の資本投資が少なくともそこで働く従業員(プロフェッショナル)のヴィザが取得できた場合もあります。対象のビジネスに関して合理的な投資額であれば良いという判断をするようです。
 法律の条文では、申請者は「実質的に相当な金額」を「既に投資したか、または実際に投資する過程にある」ことが要求されます。これは投資が既に既成事実になっているかまたはほとんど既成事実に近い段階まで進んでいることを意味します。つまりレストランに使用するために建物を購入・リースするための契約締結の寸前まで進んでいるなど。つまり、実質的な損害なしに容易にキャンセルできない段階まできていることを意味します。
 投入する資金については、ローンを対象外とされる可能性が大です。つまり、投資のうちローンによってまかなわれた部分(購入建物を担保に入れて借りた資金など)は、「資本投資」と見なされない場合もあります。実際に購入した建物の価値が50万ドルから300万ドルである場合、建前としては要求される最小投資額が全投資額の50%の25万ドルから150万ドルとなりますが、実際には50万ドルの購入額で60%以上要求される場合もしばしばあります。そして、300万ドル以上の投資額の場合は、要求投資額は30%の90万ドル程度になります。投資額が数百万ドルを超える大型の投資の場合は、要求最小額は明確に決まっていません。目安が不明なためにかえって準備する側にとっては問題となる可能性があります。
米国市民を雇用
 d 米国市民を雇用するということは、E-2ヴィザ申請の根拠となるビジネスが家族が食べて行くのがやっとというようなビジネスであってはならないということです。そのような規模より相当に大きな規模であり相当程度の利益を出す必要があります。そのための指標として、米国民を雇い入れるだけの余裕があるかどうかという点をチェックします。
  しかし、この「利益」を出すという条件は、赤字企業であれば却下されるというような単純な図式にはなっていません。営業開始後間もない企業が赤字であるということは通常よく起こることですから、それだけを指標にするというのではなく、決定を下す者(米国領事館係官またはINS係官)の独自の裁量になります。これだけの売上と利益を挙げれば良いというような明確な数字はどこにも提示されていません。つまり、赤字企業であれば却下され利益を出して税金を払えばヴィザが取得・更新できるというようなことは言えないわけです。
日常的管理
 e 「日常的管理を必要としなければならない」というのは、土地登記など買収(投資)後何も営業をせずに寝かしておいて値上がりを待って売るというような投資は、このようなE-2ヴィザ取得の要件を満たさないということを意味します。レストランなどの実質的な営業を必要とするビジネスへの投資は、要件を満たします。つまり、実際に営業、オペレーションを行うビジネスであることが必要です。ペーパーカンパニーでは資格がないということです。製品であれ、サービスであれ、実際に生産活動および利益を目的とする活動をする必要があります。
帰国の意図
 f この種類のヴィザの申請者は、米国に永住する意図がなく最終的に米国を離れる意図でなければならないことを意味します。米国を離れる意図を証明するためには、家族のメンバーが日本に居住すること、ビジネス・プロフェッショナルとしてのコンタクトが日本にあること、日本に不動産を有することなどが有効です。