さて今回も、引き続き税法・会社法の専門家である同僚の弁護士フィリップ・グティラ氏に登場してもらいました。前回は小規模ビジネス(商店・レストランなど)を家族経営で営む場合の、LLC(有限責任会社)法人化の特徴・利点を税法、訴訟、計画的遺産処分(Estate Planning)などを総合的な観点から解説してもらいました。
 グティラ氏は、フェニックスのダウンタウンにあるRyley Carlock & Applewhiteという法律事務所で主として税法、会社法などの領域で弁護士/CPAとして活躍中です。(Tel:602-440-4845、電子メールは、pguttilla@ryleycarlock.comです)今後、ビジネスの法人化、会社法に関するご相談などがございましたら、Guttilla/Kondoチームでお手伝いさせていただきます。
前回は、LLC(有限責任会社)を組織する利点について述べました。LLCは新しい会社としての組織で、ほとんどの州では1991年以降にLLCという会社組織が可能になりました。一方、Corporation(コーポレーション/法人会社)は数百年も昔から存在しています。税理士や弁護士の多くが通常、顧客に対してLLCよりコーポレーションの形態を薦める理由は、コーポレーションの歴史の長さと責任限定上の利点が広く社会的に認められているためです。
歴史的背景
 コーポレーションという組織形態を取ることにより提供される保護は、コーポレート・シールド(防護壁)と呼ばれ、長い歴史の中で多くの裁判判決が出ているために、会社を運営する上で判断を下す基礎になる知識が広く蓄積されているわけです。特にデラウェア州では、このような会社法に関する裁判所の判決の蓄積が他の州より充実しているために、多くの人々がデラウェア州で会社を組織します。アリゾナ州のビジネスであってもデラウェア州で法人化することができるわけです。他の州の裁判所も会社法の判決を出す際にしばしばデラウェア州の法律を参考にします。
 LLCはまだ存在するようになってから日が浅いために、この点ではコーポレーションに差をつけられています。歴史が浅いということは、判例も少なく、会社の運営に関する法律上の紛争が起こった場合には裁判所がどのような判決を出すか、未知の部分も少なくないということになります。コーポレーションに関しては詳細に定義されているような問題もLLCになると結果が不明瞭な部分もあるということです。おそらく、コーポレーションに適用されていた法律上の解釈の多くがLLCにも準用されるでしょう。しかし、確実に100パーセント予想するのは難しいかもしれません。このため、社会的な認識度も高いということと相俟って、コーポレーションの形態を選択する場合も多くなります。
課税対象とならない組織変更
 コーポレーションの形態を選択することのもう一つの利点は、課税の対象とならないで組織の変更ができるということです。連邦法および州法上、ある一定の条件を満たせば、コーポレーションの所有者が自社の株式や資産を他の会社の株と交換(スワップ)した時に、株式や資産の価値が増大したための利益に対する税金の支払を延期できます。つまり、小さなコーポレーションの所有者が自社を株式上場している大企業に売却して後者の株式をその代金として受領した場合、その会社売却取引に関して即時課税の対象とならないということです。その所有者が後に交換で得た上場会社の株式を売却しない限り課税されません。会社が税金を即時払うことなく売却できるということは、所有者にとって大きな利点になる場合があることでしょう。この点では、コーポレーションはLLCより有利です。
自営業税
 小規模な事業主は、単なる個人業(Sole Proprietorship)、合資会社(パートナーシップ)、LLCの形態でなく、コーポレーションを組織し、さらに「Sコーポレーション」のカテゴリーを選択することにより自営業税を減らすことができる場合もあります。「Sコーポレーション」を選択すると、全ての所得と支出への課税が会社の株主に対してなされます。例えば、一人で事業を営む場合、$100、000の純所得があった場合、この事業をコーポレーションとして組織することにより、利益を個人ではなく会社のものにできます。コーポレーションがその事業主に給料として$55、000支払い残りの$50,000を同一人物である株主(事業主その人)に配当として支払った場合、自営業税は給料として支払われた$55、000の部分にのみ適用されます。自営業税は、配当の部分には適用されません。配当はまた、メディケアの支払計算の対象にもなりません。2000年には、$76,200までの自営業所得(賃金・給料)に12.4%のソーシャル・セキュリティ税が掛かります。全自営業所得には、2.9%のメディケア税が課税されます。両方組み合わせると、15.3%になります。従って、この事業主が個人業のままで$100、000の純所得をであった場合は、このうち$72、600に15.3%のソーシャル・セキュリティ税が課税され、$100,000全額に2.9%がメディケア税の課税対象になるわけです。この例では、事業主はコーポレーションに組織した後には$55、000の給料を自らに支払っているので、15.3%(ソーシャル・セキュリティ税とメディケア税の両方)は$55、000にしか課税されません。$22、600が12.4%の課税から、そして$45、000が2.9%の課税から逃れたことnなります。金額でみると、年に$3、934節税したことになります。
[($76,200−$55,000)x12.4%+$45,000x2.9%]
 しかし、このような自営業税上の節税には一定の限界があります。IRSは、コーポレーションが株主に対して(上記の例では唯一の事業主)「合理的な範囲の給料」を支払うように要求します。事業主が自分に$10、000しか給料を支払わず、残りの$90、000を配当にすれば、IRSはこのような配分を「合理的」とはみなさないでしょう。「合理的な額の給料」とは、この事業主が遂行している業務を別に同等の資格のある者を雇ってさせた場合に必要となる給料に基づいて判断します。従って、もしこの事業主が自分と同じ仕事をしてもらうために$55、000以下の給料でマネジャーを雇うことができなければ、$55、000が妥当な給料ということになります。LLCの場合には、ビジネスの利益からLLCの所有者に配分された全額が自営業所得とみなされ、$76、200までの額であれば2,9%のメディケア税および12.4%のソーシャル・セキュリティ税の対象となります。
 上記のように節税の手段としてコーポレーションを組織する場合に忘れてはならないのは、コーポレーションは同時に一定のマイナス面もあるということです。例えば、401Kなどのようなプログラムに参加する場合にその枠組みに入る所得額が減少するということです。一般的には、自営業所得の部分のみが401Kのような課税延期措置プログラムの対象になります。自営業税上の節税と401Kのような課税延期措置プログラムとの間の相殺関係をよく研究してバランスを取る必要があるわけです。事業主が自分の方針で退職後の準備として最大限401Kプログラムで資金を貯めたいと希望する場合は、自営業税を最小化する戦略は使えないことになります。最終的には、それぞれの年齢、ライフスタリル、資金計画、所得額、退職後の計画など多くの要素を考慮して自分の選択をすることになります。
 この記事にはまだ続きがありますが、長くなりますので今回はこの辺で。また次回をお楽しみに。