高齢者アビュースの件


今回はいわゆるELDER ABUSE(シニアに対する虐待)について考えてみました。米国でも、日本でもベビーブーマーの退職年齢が迫り高齢化が急速に進みつつあります。日米両国ともに、新聞報道などによると児童虐待などと並んで、シニアの虐待についての記事もよく見られます。極端な例では、資産家の高齢者が知り合い、担当銀行員、保険会社のセールス担当、「友人」、親類の者などに財産目当てに誘拐されたり、殺されたりなどという事件も報道されています。
高齢者の中には、身体が弱るばかりではなく、アルツハイマー病などの、考える力、自らの生活上必要な意思決定、財産管理などの能力がなくなる場合なども多く見られます。そのような弱者の立場に陥った高齢者は、ELDER ABUSEの犠牲者になりがちです。虐待という言葉を使うと主として身体的な虐待を思い浮かべることが多いのですが、ELDER ABUSEという言葉はより包括的に、身体的、性的虐待、強制的拘束、ストーキング、情緒面での虐待、ネグレクト(ケア放棄)、金銭的搾取、詐欺など多くの側面を含みます。
身近に高齢者は増えていますし、皆様の中にも知り合いなどにアルツハイマーなどの知的側面での障害、身体的障害を抱えて、他者(これは親類、家族、知人、ナーシングホームなどの施設を含む)の世話になっている人たちがあるかもしれません。誰でも年をとって行くことは避けられず、また誰がアルツハイマー病に罹るかなどということは遺伝(DNA)が関係あるともいわれますが、また厳密に解明されたわけではなく、自分が将来上記のような弱い立場の高齢者にならないという保証は全くありません。
そこで、今回はアリゾナ州司法長官の事務所から出版されている「ELDER ABUSE: POTENTIAL LEGAL REMEDIS」という小冊子を参考にELDER ABUSEのいくつかの側面を探ってみました。特に今回この記事を書くにあたって関心があったのは、一般の人(近所の人など)、医療関係者、警察関係者、弁護士、ナーシングホーム経営者などが高齢者の虐待を見聞きした場合にはどのような「報告義務」があるのかという点です。一般市民が例えば、隣の家で高齢者の虐待をしているという事実を知っている場合、またはその疑いが非常に強いと考えた場合、警察などに報告する義務があるのでしょうか。皆様ももしそのようなことが隣の家で起こった場合、どうしたら良いか、どのような行動をとるべきか悩むことでしょう。そして、一般市民ではなく、病院の医師、看護婦、弁護士、ナーシングホーム経営者などより高いレベルの報告義務を負うのではないかと思われる人々の場合はどのような具体的報告義務を負い、何をどのように誰に対して報告すれば良いのでしょうか。また、一度そのような報告が「当局」に対してなされると、どのような手続きがあり、どのような手段が採られて犠牲者である高齢者が救済されるのでしょうか。このような疑問が、この記事を書くにあたって私自身がもった疑問でした。
刑法上の規定
上記のような8つのカテゴリーのELDER ABUSEに対して、その程度に応じて、それぞれ刑法上の罰則が設けられています。(詳細については省きます)これらの法律に違反して高齢者を虐待したと法廷で決定されると虐待を行ったものは通常の刑法違反者と同様に罰せられることになります。
報告義務
州司法長官が発行した小冊子によれば、一般市民でも上記のような虐待の事実を知った場合には Adult Protection Servicesまたは警察に報告できるとあります。まず、医師、病院インターン、レジデント、外科医、心理学療法士、ソーシャルワーカー、警官、その他身体的または知的障害を有する弱者の立場にある高齢者のケアに責任を有する者は、上記の虐待のいずれかが起こったときには、即時報告する義務があります。法的後見人などの場合は、虐待が起こったら即時裁判所に対しても報告する義務があります。具体的な報告方法としては、これらの者は虐待が起こったら(またはその疑いが非常に強い場合)まず自ら電話で報告し、その後48時間以内(週末が入った場合には次の営業日までに)に書面による報告を郵便または別の手段で提出しなければなりません。弁護士、税理士、会計士、受託人、後見人など身体的または知的に障害を有する弱者の立場にある高齢者の納税、信託の管理その他を担当する者は、そのような義務を遂行する上で当該高齢者が虐待(財産の搾取なども含む)の犠牲者となっていることを知った場合には、即時これを警察、Adult Protection Service、郡当局などに報告する義務があります。これらの者の場合も、上記と同様に即時電話などで報告した後、48時間(週末が入った場合には次の営業日までに)報告書を郵便その他の手段で提出する義務があります。これらの報告書の内容は、1.虐待の被害を受けた高齢者の住所氏名、当該高齢者をコントロールする者またはその保護者となっている者の住所氏名が判明している場合はそれらの情報、2.当該高齢者の年齢、障害の性質とその程度、3.その高齢者が被った傷害、身体的ケアの欠如、または財産の搾取の様態、4.その他報告者が関連すると考える情報などを含みます。
ナーシングケアホームなどにおける高齢者虐待というようなケースは割合に頻繁に話題になり、訴訟なども度々起こっています。また、逆にナーシングホームの経営者などは、家族間における高齢者虐待(特に財産の搾取、コントロール、施設への幽閉など)を観察する場合もあるでしょう。そのような虐待が起こった場合には、ナーシングホームの経営者は、即時報告義務があるということになります。密室で親族間で行われる高齢者に対する虐待・搾取などを観察する特異な立場にある者としても、そして虐待を受けている者としてはそれ以外に誰一人として助けてくれる者がいないという状況である場合などは特に、ナーシングホームなどの経営者、医師、看護婦などによる報告義務の意味は重大です。
このような問題について、一般の理解を深め、人々がより注意深く観察して、高齢者虐待の予防および起こってしまった場合の報告、救済などの対処を広く行うことにより、社会全体の意識を高め、全体的に高齢者虐待を少なくする方向へ向ける力となることができるでしょう。周辺で、高齢者虐待の例を知った場合には、誰に連絡すればよいのか日ごろから知っておくことも大切でしょう。下記にいくつかの連絡先を挙げました。
ATTORNEY GENERAL OFFICE: ABUSE, NEGLECT 800-352-8431
ELDER LAW HOTLINE 800-231-5441
ADULT PROTECTIVE SERVICE INTAKE (24 HOURS) 877-767-2385
ARIZONA LONG TERM CARE SYSTEM (ALTC) 800-654-8713
DOMESTIC VIOLENCE SHELTERS/OLDER ADULTS
λ Maricopa Emergency Housing Project (MEAPA) 602-264-4357
DISABILITIES HOTLINE:Vocational Rehabilitation 602-266-9579
DISCRIMINATION/ATTORNEY GENERAL OFFICE
λ Race, Color, Religion, Sex, Disability, Familial Status 602-542-5263
LONT-TERM CARE OMBUDSMAN PROGRAM/MARICOPA 602-264-2255
MEDICARE HOTLINE:STATEWIDE HEALTH INSURANCE HELP 800-432-4040
SENIOR HELP LINE 602-264-4357
24-HOUR STATEWIDE ELDER RESOURCE & REFERAL LINE 800-686-1431
次回は、今話題になっている「ソーシャルセキュリティ“リフォーム(改革)”」の問題について調べてみます。ブッシュ大統領は、二期目の目玉政策として個人投資口座への資金の移動も含めた「改革」を叫んでいますが、賛成論、反対論の両方を挙げ、皆さんで考えてみましょう。お楽しみに。