インターネット関連法

2008年1月からオフィスの住所が上記のとおり変更となりました。よろしくお願いいたします。

今回は、インターネット関連法に関するトピックを取り上げてみました。
皆さまもお仕事でまた家族、友人とのコミュニケーションの手段として、情報収集源として毎日インターネットをお使いになっていることと思います。E-Mailが無かったら、また情報をインターネットで調べることができなくなったらどんなに不便でしょうか。つい最近までインターネットなしで生活してきたはずの私たちですが、使用不能となったら日常生活に支障がでることでしょう。

皆さまの中には、インターネットを使用していわゆる「ネットビジネス」を展開していらっしゃる方もあるかもしれません。インターネットが突然使用不可能となったら、また、有料高速通信サービスを優先され、人々からのアクセスが減少したり、無くなったら、死活問題になる可能性もあります。

こんなにインターネットが世界中で人々の生活上普及した理由はいくつかありますが、最も重要な点は、通信手段(電話回線、ケーブル、ブロードバンドなど)があれば、それを介して世界中の人々、情報と繋がることができる、しかもインターネットの使用は通信手段の提供業者(プロバイダー)への料金は別として原則的に無料であるという点でしょう。世界中の人々が、自宅のコンピュータから、会社のオフィスから、いわゆるネットカフェから、他国の人々、情報、技術と比較的安価に繋がることができるのが大きな利点です。大企業である新聞、放送などを介さず、人々同志が直接交信し、意見・情報の交換ができ、またインターネットへのアクセスは、大企業、中小企業、個人業などのビジネスの規模の差を問わず、またビジネス用、個人用を問わず平等に誰でもアクセスできるという点が大きく普及する原動力となっています。ネットカフェに行き、比較的安い料金を払うことができれば、発展途上国の比較的貧しい学生たちでもインターネットを介して世界に情報を発信したり、受信したりできます。ある意味でインターネットは、世界を平等化したともいえるでしょう。

勿論、国によっては、インターネットのアクセスに制限を加えている場合もあります。中国では、以前に報道があったように、Yahooなどの協力の下に中国政府当局は一定のホームページへのアクセスを制限し、Webニュースなどの最中に中国政府に対する批判や中国国民に見せたくないような報道があると画面をブラックアウトしてしまうというような方法で情報伝達を当局に都合が良いようにコントロールしています。そして、米国においてもAT&Tなどの協力を得て政府は、一般市民によるインターネットアクセスについても「テロリスト対策」と称して機械的にではありますが内容のモニタリングをしていることが分かっています。しかし、一定のホームページへのアクセスを国が一方的に制限するというようなことはありません。原則的にアクセスは自由です。しかし今、そのような現状を変えるかもしれない制約的動きがAT&TやVERIZONなどの通信会社およびCOMCASTなどのケーブル会社・コンテンツ提供者の側から出ています。それに対する市民の側の「オンライン上の言論の自由を守ろう」とする抵抗運動も起こり、両方の側の圧力を受けてさまざまな法改正や立法の動きが米国議会でも見られます。これらの一連の動きは、インターネットの将来を決める重要な要素を含み、その行方によっては私たち一般の人々のインターネットへのアクセス、利用に大きな影響を与えることになるでしょう。

「ネットワークの中立性」
オンライン上の言論の自由を守ろうとする人々は上記のようなインターネットへの比較的平等なアクセスを「ネットワークの中立性」という言葉で表現し、Federal Communications Commission (FCC: 連邦通信委員会)を規定する「Communications Act of 1934(1934年通信法)」はインターネットの中立性を保障するものであると主張しています。

インターネットへのアクセスの差別化の動き
AT&T、VERIZONなどの通信会社およびCOMCASTなどいくつかのケーブル会社・コンテンツ提供業者はサイト、サービス別に、インターネット通信の速度を有料でより高速なものと「普通」の速度のものと差別化しようとしています。このような差別化が実現すれば、高額の料金や投資に耐えられる大企業は自社サイトに高速サービスを適用し、そのような料金や投資に耐えられない中小企業や個人は「普通」(より低速で優先順位が低い)速度に追いやられるという強制的棲み分けが起こることが予想されます。このような動きに反対するネットワーク中立性を主張する人々は、インターネットは放送電波や電力、水道、ガスなどのいわゆるュティリティと同様、公共性をもつ、人々が平等に使用できなければならないものであると主張します。つまり、このような速度の差別化はインターネット本来の中立性に反し、大企業によるインターネットの私物化を招き、一般市民の言論の自由を奪うものであり、絶対に許してはならないという立場をとっています。

議会の動き:H.R.5353 Internet Freedom Preservation Act of 2008
現在議会では、インターネットの中立性を明文化するための上記の法律が下院議員Ed Markey(下院通信およびインターネット小委員会議長)により提案されています。同議長は、インターネット特にブロードバンド通信の開放性を保持し万人に平等なアクセス、ひいては憲法で保障される言論の自由および革新的なアイデアの交換、ビジネス障壁の解消を保障することが米国の将来の繁栄にとって重要であると述べています。

同法案は、法成立後90日以内にインターネット上の自由、ブロードバンドと消費者の権利についての現状を調査するためにFCCが作業を開始しなければならないと規定しています。調査の内容としては、消費者のインターネット、ブロードバンドへのアクセス、コンテンツの受信、送信、適用などが阻害されていないか、法律で保証されている使用が自由に選択できるか、ブロードバンド通信提供業者がより上質のサービスまたは特定のサービスやコンテンツを提供することについて追加料金を課しているか、同提供業者が通信の速度を差別的に適用しているか(優先順位を与えているか)、などが含まれます。また、同法は、同法成立後1年以内に一般を対象とする8回のPublic Broadband Summits (一般向けブロードバンド会議)を米国各地において開催することもFCCに義務付けています。このサミットの目的は、一般市民、市民権運動家、中小企業主、ベンチャー・キャピタルなどの人々を集めて意見を聞くことです。このような調査、公聴会などの過程において、ブロードバンド・インターネット通信を介して一般の人々の意見も広く聞き取るようにという規定もあります。

インターネットと政治
インターネットの活用により、米国の政治運動のあり方が大きく変わったことはみなさまもご存知のとおりです。大統領選出のためのプライマリー選挙においても伝統的な資金集めのパーティによる政治資金、選挙資金集めを遥かに凌ぐ勢いと規模でオンラインによる情報伝達、組織化、資金集めが行われています。候補者の中でオンライン・メディアを最も効果的に利用する術を獲得した民主党オバマ候補は、100万人に迫るといわれる一般の民衆からの小額の寄付により、現在クリントン候補より遥かに潤沢な選挙資金を自由に使える立場にあるという新聞報道をお読みになった方もあるでしょう。また、オバマ候補支持の若者たちが「勝手連」としてオバマ選挙事務所と関係なく自主的にユーチューブに応援プログラムを載せたり、「オバマガール」と称する女性がインターネット上で宣伝ショーを展開したり、インターネットを強力なメディアとして利用した動きは大きな影響力となっており、最近のオバマ候補ブームに貢献したと見られています。このような米国における政治と一般の人々との関わりの変化、政治運動、選挙運動そのものの変化はインターネット無しではありえなかったでしょう。

同法案の行方が注目されます。