GMO(遺伝子組み換え)食品の話

2012年2月13日のアンソニー・グチアルディ(Anthony Gucchiardi)による「Natural Society」の記事によると、同日、フランスはリヨンの裁判所が、GMO作物のための除草剤(Lasso)が中毒症状を引き起こしたとするポール・フランソワという農民の主張を認め、この化学物質の製造者であるモンサント社を有罪とする判決を出しました。ポールは、自分の記憶喪失や頭痛など神経系統の病状は同社の除草剤(Lasso)を2004年に使用したことによるものだとしました。農民たちがこれまで同社に対して各地(各国)で起こしてきた訴訟で敗訴してきたことを考えると、この判決は画期的なもので、今後は同様な裁判が有名なRoundupなどの除草剤に関連して他の国でも起こる可能性が高まりました。ポールは、モンサント社がこのLassoのような除草剤が中毒症状を引き起こす可能性について警告しなかったという点も追及しました。判決後、彼は、「自分は生きているが、農民たちは今後も犠牲になり死んで行くだろう」と述べています。

同記事によると、フランスではこのLassoという除草剤は、2007年に使用禁止になっていますが、被害は既に広がってしまったということです。

この裁判の記事を読んだ少し後に、ダウ・アグロサイエンス社とモンサント社が共同で開発した除草剤が間もなく使用されるようになるという内容の記事が目に留まりました(“Dow and Monsanto Join Forces to Poison America’s Heartland,” by Richard Schiffman, 2012年2月23日Online 版“Truthout”記事 )。この記事によると、Roundup耐性のGMO作物と組み合わせて使用される除草剤であるRoundupの次世代の除草剤としてダウアグロサイエンス社とモンサント社が「2,4-D」という除草剤を新たに開発して使用許可を得ようとしているということです。このような「次世代」開発の動機は、Roundupに耐性を持つ雑草が増えてしまったという実態のようです。つまり、Roundup 除草剤で死なない雑草が多くなりRoundup耐性を持つGMO作物(主としてトウモロコシ)の栽培に支障が出るという現状になってしまったということです。それなら、とばかりにこの「2,4-D」を開発したというのですが、問題はこの物質が歴史的に有名な「Agent Orange」というベトナム戦争中にベトナム全土を「枯れ野原」にしようとする米軍の政策で散布された化学物質と類似している点です。え、「アメリカを枯れ野原にしようというの?」と一瞬驚いてしまうような話ですが、両社は農業の救世主としてこの物質を推進しています。モンサント社からこの「耐性トウモロコシの種」を購入する農民はRoundupと2,4-Dの両方を農地に散布することを義務付けられます。

ヨーロッパのいくつかの国とカナダのいくつかの州では、後者の使用が禁止されており、物質の毒性(発がん性や奇形児の出生など)も歴史的に証明されてきたため、その使用に反対する農民も環境学者も多くいます。Agent Orangeを浴びてしまったベトナム帰還兵の間に広く見られたホッジキン性リンパ腺がん、非ホッジキン性リンパ腺がん、白血病などを引き起こす可能性が高いと憂慮する研究者たちもいます。EPAはこの化学物質が人体中で内分泌系やホルモン系に悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。またUS Forest Serviceおよびその他の研究によると、ミツバチ、鳥類、魚類に悪影響を与える危険があるということです。

日本ではGMO食物は、一定のレベルと制限はあるものの一部表示の対象になり、消費者は不十分ではありますが、GMO項目を含む食品を消費するか否かの選択を少しは与えられています。しかし、米国では、GMO項目の食品への組み込みは表示義務の対象とはなっていません。今後も、その状態が続けば、Roundupや2,4-Dへの耐性の大きい作物から作られた食品を毎日口にすることになるでしょう。(現に、その状態ですが。。。)これらの化学物質が本質的には枯葉剤であることを考えると、それらに対する耐性をもった食物を口に入れるということになり、少し恐怖を感じる方も多いでしょう。そして環境について考えるとき、枯葉剤Roundupが効果的でなくなり、それにさらに加えて2,4-Dを加えて散布しないと死ななくなった雑草が増えることも怖くなります。両方散布しても雑草が死ななくなる日はそう遠くないでしょう。次はどうするの?という疑問も湧いてきます。農作業に携わる人々は、より毒性が高い物質を次々と浴びることになります。

自分たちの口に入る食物がどのような組成をもっているのか、それを食す消費者、農作業を行う人々の健康にどのような影響を与えるのか、そして私たちが暮らす環境が私たちが受け入れる食物の在り方により、どのように変化する可能性があるのかと考えて行くと、全てが繋がっており、相互に影響し合っているということが明確になります。大きな曲がり角にあることは確かです。