SB 1062とは?


本日のThe Arizona Republicの第一面のトップの記事は、「Brewer Pressed to Veto SB 1062(ブルーワー知事SB1062を拒否権発動するようにプレッシャーをかけられる)」というタイトルであり、これ以外にもいくつかの関連記事が掲載されていました。この法案はHB 2153としてアリゾナ州下院を通過し、ほんとんど内容が同一であるSN 1062として州上院を賛成17票反対13票で通過し、2月25日現在州知事の元に送付済み、ブルーワー知事の決定を待っているところです。知事としてはこれに署名して法律として成立させる、拒否権を発動して法律として成立する可能性を断つ、または何もせず放置することにより州知事の署名無しに州法として自然成立させるという三つの選択肢を与えられており、アリゾナ州のみならず、全米でブルーワー知事がどのような決定を下すか注目を浴びています。

この法案について賛成派と反対派の両方から激しい議論が闘われています。カトリック教会は、基本的には知事にこの法案に署名するよう促していますが、個々の宗教指導者の多くは拒否権発動を求めています。アリゾナ州の連邦上院議員マケインとフレークの両氏はすでに法案反対を表明し、知事に対して拒否権発動を促しています。ビジネス業界を代表する州商工会議所またアメリカン航空やアップルなどの企業も個別に反対を表明していいます。SB 1062がなぜこんなに大きな議論を呼んだのか、またなぜ全国的な注目を浴びるのか、内容を簡単に見てみましょう。

今回の法案は1999年来存在している州法である「アリゾナ宗教的自由回復法」の修正案として議会に提出されたものです。法案提出者および賛成派の見解は、アリゾナ州民の宗教的自由は時を経て後退してきたので、これを強化する必要があるというものです。賛成派はこの法案を「宗教的自由回復法」と名付け、アリゾナ州民の宗教的な信念・信仰を実施・実行する自由を保証するための法律であると主張しています。具体的には、宗教上の信仰に則り、同性愛者等を不道徳な者たちと信じる者は、個人として、ビジネスとしてまた団体としてそれらの者に対してサービスの提供(物品の販売を含む)を裁判所に訴えられる危険を冒さずに拒否できるというものです。

同法案に反対する側の見解は、そのような「宗教上のまたは信仰の自由」というのは言い訳に過ぎず、実質的には結果として同性愛者等の公民権を侵害するものであり、法の下における平等という憲法に保証された権利を特定のカテゴリーの者について奪うものであり違法であるというものです。

SB 1062に反対を表明する者たちは、SB 1070というかの全米・国際的に悪名高き不法移民を対象とするアリゾナ州法成立によりビジネス、スポーツ、観光旅行者、企業の会議、大学関係などあらゆる方面において全国的あるいは国際的にアリゾナ州がボイコットの対象となり多大な経済的被害を被った過去の記憶がまだ生々しく残っているのです。同法成立後、数十万というヒスパニックの人々が他州に移住したりメキシコその他の母国に戻り、アリゾナ州はボイコットの影響のみならず、劇的な人口減少による経済的縮小を余儀なくされたことをまだ記憶している州民も多くいます。ビジネスばかりでなく、スポーツ業界もSB 1070成立の際にはNFLのフットボール試合をキャンセルされてしまうなど大きな影響を受け、経済的損失も多大なものでした。今回もそのようなボイコットや催しもののキャンセルなどを予想し、早々に法案反対の立場を鮮明にし、知事に対しても拒否権発動を勧めているというわけです。まだ法律の成立が決定していないにもかかわらず、ホテルや旅行業者にはすでにSB 1062についての問い合わせや予約キャンセルの通知が来ているという報告もあります。

ここで興味深いのは、上記のように17対13で法案が共和党賛成民主党反対という党による票分かれにより上院を通過した後、反対意見が激しく展開されると賛成票を投じた3人の共和党上院議員が自らの投票行動を否定して反対に回り、現時点では知事に対して拒否権の発動を促している事実です。つまり、これらの共和党議員が反対票を投じていれば、この法案は上院を通過しなかったことになります。複雑な議論をますます複雑にしている一要因です。

SB 1062反対論者たちは、宗教的信仰に基いた差別を許せば、例えば、同性愛者のみでなく、当事者の信仰に応じて、回教徒はキリスト教徒の目から見れば神を侮辱する異教徒であるのでサービスを提供すること(物品を売ることも含み)を拒否できることになり、差別対象は際限もなく拡大される可能性があるとしています。私が考え付いて例では、純粋な仏教徒や菜食主義(宗教的理由によるという制限付きで)者は、この法律が成立すれば、堂々と「全ての非菜食主義者」にサービスの提供(物品の販売を含む)することを拒否できることになります。ここまで考えてくると、本当に奇妙な法案であることが分かります。誰が菜食主義者で誰が非菜食主義者であるのか、一人一人の客に問うのでしょうか?そして世の中は非菜食主義者が圧倒的多数を占めているので、このような「宗教的自由」を実行する商売人は、ほぼ経済的自殺行為をするということにならないでしょうか?

私個人の見解としては、ビジネス上の影響に関心が高いブルーワー知事は共和党連邦上院議員たち、賛成票を投じた3人の州上院議員たち、および高名な共和党指導者、アドバイザーたちが拒否権の発動を求めているという事実を力添えとして拒否権を発動し、SB 1062は最終的に法律として成立しない可能性が大であると予想していますが、奇天烈な法案が次から次へと議会に提出されることにおいて全米でも「指導的立場」を築いてきたアリゾナ州のこと、州知事が決定を下すまでは予断を許さないでしょう。成り行きが注目されます。