アリゾナでのお一人老後?


今回は、どきっとするお話をすることになります。

人間は生まれて、育ち、大人になり、仕事をしたり、子育てをしたり、そして次第に老いて最後は死んで行きます。長いようで意外に短い旅路でもあります。私自身も次第に人生の後半のまた後半に突入する年齢になったということもあり、また仕事がら「老後」の問題にぶち当たる方々の様々な問題についても知る機会があります。

問題が起こりがちなカテゴリーの方々があるということにも気付いてきました。最近日本の新聞などで使用される用語「おひとり様の老後」に当たる方々です。アリゾナにもそのカテゴリーに属す方々が多数住んていると思います。もちろん、このようなカテゴリーに属す人々は、日本から米国アリゾナ州に移住して暮らしている人々ばかりではなく、一般的に誰にでも起こり得ることなのですが、私が見聞きする例は自然に日本人(国籍に関わりなく、日本からアリゾナに移住して暮らしてきた人々)が多くなります。

「おひとり様の老後」になる人々は、生涯独身でいた人々、結婚していたが離婚しその後は独身の人々、夫と死に別れで寡婦になった女性たち、また妻に先立たれて一人残された男性たちなどですが、平均寿命として女性の方が長生きなので、寡婦になる女性の人数の方が圧倒的に多いのは自然の成り行きでしょう。それに加えて子供がいない。。。というカテゴリーの方々がいろいろと困難に直面する場面を見てきました。

直近の例ですが、アリゾナ州で最近夫を亡くし、子供がなく、初期のアルツハイマー病の症状がある女性について日本に居住しておられる妹さんから相談を受けました。夫を亡くし一人で暮らすことができないので、「施設に入れた」という知らせを姉の夫の死後1か月以上経過してから夫側の親戚から受けた妹さんが、驚いて日本から飛んできてみると、アルツハイマー患者など認知症の患者さんたちを主に収容している施設に入れられたこの女性は、比較的良いケアを受けているとはいえ、パスポート、ID、クレジットカード、銀行の情報、年金が振り込まれる口座など全てをこの夫の親戚に握られ、1ドルのお金さえなく、身の回りのケアのための化粧水、歯ブラシなどの小物も何もなく身一つで収容されていました。お金がないので、歯ブラシは妹さんが日本から飛んでくるまで数週間におよび買うこともできず歯を磨くこともできなかったということです。本人の了解なく、家はこの親戚が「売りに出した。家具なども整理した」ということで、本人は「家に戻りたい。私に断りなく家を売りに出すなどとは信じられない」と憤慨していました。妹さんが「私が世話をするから日本に帰って一緒に暮らそう」と言うと、ご本人も「この施設から出たい、日本に戻りたい」という希望でした。妹さんが「日本に連れて帰るのはどうか」と夫側の親戚に提案すると、「そんなことはできるはずがない。私たちが面倒を見る。家を売ってそのお金を投資して費用を捻出する」と相手にされませんでした。

妹さんが「姉とちょっとショッピングなどを楽しみたいので、30分ほど施設から出たい」というと、施設側からは「だめ」という返事で外出することもできませんでした。この親戚はご本人の財産の管理ができるように裁判所から権限を承認してもらうべく、申請する計画中ということで、まるで人質のようにご本人を囲い込み行動の自由を奪っていました。正式に遺産を相続したわけでもないのに、夫婦で使用していた自動車を勝手に乗り回すという行動にも出ていました。また、実の妹という日本側の肉親が飛んできたにもかかわらず、明らかにコントロールを渡すまいという態度を見せていました。妹さんが訪問の知らせをすると、他州に居住しているにも関わらずアリゾナにやってきて訪問中ずっと監視の目を光らせていました。

パスポートを取り上げられたまま、身分証明書もなく、妹さんが上記のような障害を乗り越えて姉を日本に連れ帰るためには、いろいろな困難があります。何とか日本から戸籍謄本を取り寄せて、領事館で特急でパスポートを再発行してもらうか、帰国のためのみの「旅行証明書」を作成してもらって日本に帰国するという手続きをしなければなりません。時間もお金もかかります。

今回のようなケースに直面する度に、誰でもみな、まだ気力も体力もあるうちに自分の死後、または自分がいろいろな能力を喪失した時点で誰に財産の管理や自らのケアを任せるかということを決めておかなければいけないということを再認識します。特に家族関係が複雑であったり、まは子どもがいないというような状況であれば、周囲の姻戚や親戚の思惑によって自分の運命が大きく作用されることや、財産・身体の自由を奪われ、「囲われの身」になり、自分が希望することと全く異なる処遇に遭遇する可能性もあります。

みなさまの周囲にこのような危うい「おひとり様の老後の候補者」がいらっしゃるようでしたら、将来後悔しないように準備をするよう、促して差し上げてください。もちろん、潜在的には誰でも「おひとり様の老後」を迎える可能性はあります。子供がいても不幸にして子が親に先立ち亡くなるという事態もありえます。備えあれば憂いなし。。。というのは本当ですね。全ての状況に備えるということは不可能かもしれませんが、少なくとも自分の意思を文書にして作成しておくことは大変重要です。