サイバーセキュリティとプライバシー


屋外のスポーツや散歩などに最高の季節が続くアリゾナに戻ってきました。「この季節のためにアリゾナに住んでいるのよ」と皆が感じる今日この頃です。スノーバードの方たちはそろそろ夏の住まいに移動する支度を始める頃でしょうか。

今回は、最近サイバーセキュリティとプライバシーとの間のバランスという観点から話題になった連邦政府(FBI)対アップルのケースについてお話しましょう。昨年カリフォルニア州で14人を銃の乱射により殺害した犯人サイード・ファルークのiPhoned5Cのデータにアクセスしようとして暗号化されたパスワードのために失敗した(アップル社はFBIがアップル社のIDとパスワードを変更してしまったと主張)FBIが、アップル社に対して「この暗号化(10回IDとパスワードを入力するとデータが消えてしまうという仕組み)を克服してデータにアクセスできるような、アップル社のカスタマーのiPhoneを監視できるようなソフトウェアを新たに開発せよ」と要求したところから両者の間には対立が生じました。アップル社が「すでに十分協力した、現在存在していないソフトウェア・プログラムをFBIのために開発することまで要求されても協力できない」と突っぱねたところから裁判所で争うことになりました。カリフォルニア州連邦裁判所第一審では裁判所は、アップル社にこのようなソフトウェア・プログラム開発を行いFBIに協力するよう命令を下しましたが、アップル社は「裁判所命令があってもそのような開発はできない」と主張したために事態は膠着状態に陥っていました。このようなプログラムは、実質的にはiPhoneなどのデバイスにスパイウェアを組み入れておき、FBI、警察その他の捜査当局がユーザーのデバイスにアクセスしてメッセージやE-メールを読むことができるようにするということを意味します。アップル社はこのようなソフトウェア・プログラムを開発すれば、捜査当局ばかりでなく、ハッカーなど違法な目的のために活動する人々にも利用される可能性があると主張しています。また一度米国政府にこのような便宜を図れば、世界中の中には独裁的な政府も含めあらゆる政府から同様な圧力を課された時に拒否できなくなるという懸念も示されています。

世論としては、テロリスト関連の捜査は社会のセキュリティ確保のために重要なことであり、プライバシーを守ることができなければ顧客の信頼をうしなうことになるのでそのような協力はできないというアップル社の主張は誤っている、と考える人たちが多数派を占めています。

この3月21日にも当該連邦地裁でさらなる審理が行われる予定であったところ司法省側(FBI側)が急にロック解除の方法が第三者から示されたとしてキャンセルしました。このようなロックされたデータへのアクセス確保に協力した会社は、サン電子という日本の会社の在イスラエル子会社であるセレブライト社で、同社の技術を使用すればロック解除しなくても、ロックされたデータを読み取れるということです。(2016年3月23日付けロイター記事)

アップル社と司法省との法的解釈のやり取りや司法省側を支持するマイクロソフト創業者であるビル・ゲーツやアップル社側を支持するグーグル社を始め通信会社やIT企業、プライバシー権利擁護団体などの論戦の成り行きが注目されていたのですが、ここにきてこの論戦は一時お預けとなってしまいました。今回の件では第三者が協力を申し出たことにより裁判所で延々とアップル社とソフトウェア・プログラム開発を強制できるか否かで渡り合う必要がなくなった司法省ですが、この法廷での論戦の一時中止はあくまでも一時中止であり、 FBI は4月5日までにこの第三者会社による協力が実際に犯人のiPhone中のデータへのアクセスをもたらすものであったか否かを連邦裁判所のシェリ・ピム裁判官に報告することになっています。この試みが失敗すれば、両者の法廷での争いは再開することになります。

例え今回の件でFBIが子の特定のiPhoneについてデータへのアクセスを確保できたとしても、今後別のケースでまたこのサイバーセキュリティとプライバシーとの間のバランスをどこに置けばよいかという論戦は再開するでしょう。アップル社のみを例にとっても、今後開発されるiPhoneの新しいモデルにおいては、セキュリティはより高いレベルのものになると予想されるので、今回FBIが得た第三者会社の協力の方法ではロック解除ができないと考える人たちもいます。議会でもいくつか関連の法案が準備されてもいるようです。この論争はもうしばらく続きそうです。

みなさんはどう思われますか?自分の通信やデータの全てがFBIその他の政府当局に全て筒抜けと言う状況は(もうすでにある程度起こっているとしても)あまり気分の良いものではありません。しかし、犯罪者特にテロリスト間の通信などについて捜査する必要があると言われればある程度の説得感もあるし。。。。等。