大学めぐりの旅:ニューイングランドからの便り
今回の記事は、法律相談とは直接関係ありませんが、17歳の娘と共に大学めぐりの旅の宿で考えたことをまとめてみました。娘は米国で生まれましたが、3ヶ月の時に日本に帰り6歳の時に米国に戻ってきました。小学校1年生から現在の高校のジュニアになるまで11年間米国で教育を受けました。9年間アリゾナ学園に通学して日本語を話す能力と書く能力を何とか保持することができました。大学の進学を考えるときが来ましたが、やはり米国の大学に進学するのが最も自然であろうという結論になりました。これまでに日本からご両親と共に米国に来て数年間過ごし、ご両親が日本に帰国した後も米国に留まりそのまま米国の大学に進学したお子さんたちの例もいくつか見てきました。読者の皆様の中には、小学生、中学生、高校生のお子様があり、「将来の教育はどうしようか」と迷っていらっしゃる方もあることでしょう。
通常米国の高校には、「大学カウンセラー」がいて学生たちの相談にのってくれます。娘の学校は私立学校ですが、今年の1月(つまりジュニアになってから5ヶ月目)に大学カウンセラーとの面談が始まりました。カウンセラーは、学生一人一人に将来何になりたいか、どのような規模の大学が良いか、どのような自然環境の大学が良いか(大都市対田舎など)、総合大学がよいかリベラルアート・カレッジが良いかなどについて質問し、10の大学を選んでくれました。これらの大学は「現実的に十分可能」、「ストレッチ(ちょっと背伸び)」、「バックアップ」などと分類されていました。このような段階分類は、対象大学の入学の難易度と各学生の学業成績(GPA:Grade Point Average)、SATまたはACTの成績を比較してマッチングを割り出したものでした。
この予備的に選択されたリストに基づいて、多くの学生がジュニアの年の春休みから以降シニアの年の前半に、いくつかの大学を見学に行くことになります。地元の大学であれば自宅から簡単に訪問できますが、別の州の大学であれば何日かかけて見学旅行に出ることもあります。親元を離れ別の州の大学で勉強してみたいという希望がある娘は、ニューイングランドのいくつかの大学を友人と共に訪問する計画を立て、二人の付き添い兼運転手として母親である私が「大学めぐりの旅」を共にすることになりました。大学カウンセラーは、訪問先の大学と連絡を取り、学生は各大学の訪問・説明ツアーに参加したり、インタビューを受けたりします。通常は、各大学ともシニアの学生たちを中心にインタビューをします。
このような大学見学の旅が難しい場合にも、各大学から「リクルート」の係り(通常はアドミッションの人間)がアリゾナの高校にもインタビューや「大学フェア」のためにやってきます。フェニックス、スコッツデール周辺ではブロフィー(私立)、ザビエル(私立)、スワロー(公立)のような高校で「大学フェア」が実施されました。このフェアには、これらの高校の学生ばかりでなく、他の高校の学生や両親も自由に参加できます。このフェアの会場でインフォーマルなインタビューをしてもらうこともできます。このようなフェアに来るリクルート係りの人間は、通常各大学の米国南西部地域のアドミッション(学生入学選考)を担当している者です。フェアの場所で、面談し記憶しておいてもらうと、その後電子メールや手紙で直接学生に連絡がくるようにもなります。積極的に質問などをして連絡を密にすると、大学側では通信記録を作成しその学生のデータがファイルに蓄積することになります。また、このフェアの場所で各大学に対して「資料送付要請」をしておくと、いろいろな大学からそれ以降たくさんの資料を送ってくれます。最近は、自宅に送られてくる郵便物の中に娘の宛名の大学からの「売り込み」ダイレクトメールが1日に数通見られるようになりました。まるで、クレジットカードのセールスのようです。米国では大学の学生リクルートも、実にビジネスライクに行われるものだということが分かります。   
ニューイングランドの大学めぐりをしてみると、午前中に一つ午後一つと自動車で回れる範囲の大学を選択して回っているので、同じ親子連れ数人と午前も午後も出会ったりします。笑ってしまったのは、子供の方はソファにドテっと座って「あーあ、退屈だ、こんなところに来たくなかったのにな」という顔をしている反面、教育ママ風の母親が寮のことやコースの選択、友達関係など大学生活の細部にわたり質問したりします。「誰が大学に行くのかしら」と思ったりします。
アリゾナの「大学フェア」に来たときに知り合いになった南西部アドミッションの係りの女性に娘が挨拶をしていると、アドミッションのトップ(ディーン)がみなの前に出てきて、ニコニコ笑いながら「本当に遠くから来てくださってありがとう」とまるで「Thank you for flying by America West」と言いながら頭を下げる航空会社の機長さんのようだったことです。「まるでセールスマンだね」と娘を笑ってしまいました。
大学めぐりの旅から帰ると学生は大学カウンセラーと再度面談し、リストにある大学の数をさらに絞ります。夏休み後、9月には願書提出の準備を始めます。必要な書類は、学業成績書(シニアの前半までの高校全体を通じての成績、どのようなレベルのコース(AP:アドバンスト・プレースメントなど)を選択したかの記録、学生自身が書いた小論文(大学によっては共通の小論文を電子メールで受け付ける大学もあります)、教師二人からの推薦状、課外活動記録(いわゆるコニュニティ・サービス、リーダーシップ、スポーツ、音楽活動など)、SATの成績(外国からの学生である場合には、SATと共にTOEFLのテストの成績も提出)などです。大学毎に願書の締め切り日は異なりますが、一般的には1月の15日くらいまでに締め切りとなります。最近は、「ローリング・アプリケーション」というシステムが採用されるようになりました。このシステムは、いわゆる「ファースト・カム・ファースト・サービス」という原則のことです。つまり、早く願書を出すほど入学の成否の結果が早く知らされるというシステムです。
この他にも、「早期決定(Early Decision)」と呼ばれるシステムがあります。この大学にぜひ行きたいと学生が決定した場合には、その大学に対して「早期決定」適用を願い出て11月15日くらいまでに願書を提出することにより、大学側が特別枠で入学成否を審査し、12月末までに回答してくれます。この場合には、最初に学生は「もし貴校が入学を許可してくれる場合は、必ず貴校に入学します」という誓約をしておきます。つまり、他の大学から入学許可がきても、そちらに鞍替えすることができなくなります。このシステムは、明確に自分の行きたい大学が分かっている場合に有利になります。
日本の大学入試は、一回の試験の成績が決定要素となる「一回勝負」ですが、米国の大学の場合は、複雑に多数の要素が絡まりあって入学の成否が決定されることになります。学業の成績やSATの成績ももちろん考慮されますが、課外活動やリーダーシップというような日本ではあまり評価の対象にならない要素も相当に重要な決定要因になります。
今回のニューイングランドの大学めぐりでは、大学カタログで読んだ内容と現実にキャンパスを歩いてみた感想とが相当に食い違ったりしてやはり「自分の目で確かめること」の大切さ再確認させてくれます。読者の方々の中には数年後に大学進学を控えたお子様がおありの方もあるでしょう。夏休みなどの家族旅行の機会を利用してついでに「大学めぐり」をなさってはいかがでしょうか。今回の記事は、直接法律問題には関係がありませんが、米国で生活し子供の養育にあたっている日本の方々のご参考になれば幸いです。