フォークロージャー

今回は、先回に引き続きForeclosure(差し押さえ・抵当権実施)に関連する問題を取り上げてみました。このところ毎月、前月の新たな失業者65万人前後という発表があり、株式市場が少し上昇傾向を見せているにも関わらず、一般の人々の生活状況は一向に良くならないようです。オバマ大統領の政策による「景気刺激策(Stimulus Package: 2009 年3月4日発表)」の目玉の一つとして失業保険給付を数カ月延長してもらった人々も数多くいますが、毎月60万人以上も新たに生まれる失業者の波に押され、現在求職中の人々も仕事を見つけることは極めて困難な状況が続いています。僅かにあった貯金も底を尽き、食糧を購入するか、ガソリン代を払うか、家のローンを払うか、その全てを満たすことができなくて、直接的生存と仕事探しに必須の食糧代とガソリン代を払い、ローンの支払を止めてしまう人の数も毎月増えています。もう一つの目玉としてHome Affordable Modification Program (HAM)も発表されました。このプログラムでは、ローンの貸し手は、借り手の毎月の収入の31%程度まで返済額を調整するように政府から支援金(例えばローン調整1件につき$1000など)も得て奨励されています。

住宅ローンの支払を止めてしまえば、理論的には1月分でも未払いとなった時点で、債権者である銀行やその他の金融機関は、Foreclosureの手続きを開始することができます。通常ですと、ローンの支払いを中止した時点から6か月から9か月の間にForeclosureの過程が完了し債務者である家の所有者は自主的または強制的に当該住宅を明け渡さなければなりません。現在は、あまりにも多くなった債務不履行者に対して、銀行その他の金融機関も通常のスケジュールでForeclosureを実施することが少なくなり、オバマ政権側からの働きかけもあり、ローンの支払いが中止されてから通常のForeclosure手続きに入る前に3か月程度の猶予期間を設けることが多くなっています。しかし、1,2月ごろから始まったこの猶予期間も多くの場合そろそろ3か月を過ぎ、不動産ブローカーなどと話をすると、「これからまたForeclosureが増える」と見込んでいる人が多いようです。

実際のForeclosure過程
住宅ローンの毎月の支払いが不履行の状態になると、通常は3,4回続けてローンの支払いを怠った時点で「債務不履行通知/Foreclosure Notice (抵当権実施通知)」が送付されてきます。先回お話しましたように、アリゾナ州では必ずしも裁判所を介して正式にForeclosure手続きを開始する必要がありませんので、通常では比較的迅速に手続きが前進します。しかし、現在のように、Foreclosure済みの無人の家をすでに多数抱えた銀行その他の金融機関は、毎月そのプールにさらに多数の家を抱え込むことに躊躇し、本来ならForeclosureとなっているはずの家が4,5か月ローンの返済を止めている状態でも債務不履行の通知すら来ない、または債務不履行の通知が来てもなんら貸し手の側が行動を起こさないので、借り手はそのままローンの支払いをせずに、その家に住み続けるという例も多数あります。

上記のように、猶予期間を過ぎ、またForeclosureの数が増えると予想する人たちもいますが、反面では6か月以上もローンの支払いを止めているが、債務不履行の通知が来たまま、その後は銀行や金融機関から何ら連絡もなく、借り手の側で「いつまでもここに住み続けるわけには行かないであろう」と考えて、別の住宅を手配し、「XX月XX日までに退去します。。。」と知らせた途端に貸し手側から「退去しないで、もうしばらくそこに住んでいてください」と逆に頼まれてしまったなどという話も聞きます。貸し手の側では、無人化した住宅が盗難や放火などの被害に会い価値が限りなくゼロに近くなってしまうよりは、ローンは支払わないが、家のケアをし、盗人に対しての防波堤となってくれる住民をそのまま確保しておきたいと考えるようになる場合も多いようです。このような措置はあくまでも一時的なものですから、先行き安定した住宅を確保しなければならない借り手にとって長期的解決にはなりませんが、即日立ち退きを迫られるよりは時間的な余裕をもたらしてくれる次善の策と言えるでしょう。貸し手の側が「そのまま居住していてよろしい」または「そのまま居住しておいてください」と意思表示した場合、少なくとも数か月、場合によってはより長期的に住宅が確保でき、しかもローンの支払はない、つまり家賃が無料の賃貸をしているような状態になるわけです。ある意味では、失業、病気その他の経済的な事情で債務不履行となった者にとってこれほどありがたい話はない、ということになります。

もし、皆様の中で諸般の理由から住宅ローンの支払いが滞った状態になってしまった方がありましたら、焦って慌てて立ち退きをせず、現在オバマ大統領の政策として開始済みとなっている「ローンの借り換え」プログラムなどを利用して毎月の返済額、利率、返済期間などを調整して無理のない支払い額になるようにしてもらうことができるように試してみてください。(大きく報道されたこれらのプログラムですが、いろいろと厳格な条件もあり、実際にローンの借り換え、利率の調整、当初のローン返済額そのものの削減、返済期間の延長などに成功した消費者の数はまだまだ少数のようです)

ある大手銀行のローンブローカーとして、今回の「借り換え」や「調整」を担当する人とオバマ政権によるローン借り換え・調整プログラムについて話をしたところ、次のようなことが分りました。

現在では、このプログラムの対象となり得る者の資格は、
1. ローンの額が家の現在の推定評価額(Appraisal)と比較して105%を超えないこと。
2. 債務不履行となっていない者。
条件の1つであるローンの額が家の評価額の105%を超えないという制限を満たすのは、現在のアリゾナの不動産市場では困難な場合が多くなっています。フェニックス周辺ではここ1,2年で住宅価格が50%位下降した地域も多いですから、105%という条件をクリアできない場合が多数に上ります。このブローカーの話によると、アリゾナ州を始め、ネバダ州、カリフォルニア州、フロリダ州などバブルの膨張も破裂も急激であった諸州ではこの105%より少ないという条件を満たすことが困難なため、オバマ政権側ではこれらの諸州においてのみ制限幅を150%まで拡大することを検討しているそうです。

この政策的プログラムへの参加は、必ずしも調整を実施している銀行や金融機関が出した最初のローンに対してのみ行われるということではなく、別の銀行が出したローンに関して多少条件に相違点があるものの、借り換えや調整が可能だそうです。

貸し手の銀行や金融機関と直接借り手がローンの借り換え・調整について交渉することももちろん可能ですが、巷には「ローンの借り換え・調整、貸し手との交渉サービス」を売っている企業も多数あります。政府系の相談機関との差は有料である点ですが、これらのサービスを利用する際には、十分注意を要します。事前に700−4000ドルの費用を前払いさせる会社、成功報酬的にもし借り換えが成功しなかった場合には前払いした金額を全額返すというシステムの会社など、多様なサービスの提供方法があるようです。中には、費用を先取りしたまま、ほとんど何もしている様子が見られず半年も経過してしまったなどという例もあるようです。消費者の弱みに付け込み、容易な金儲けの種にしようとする悪質な業者もあるようですから、十分注意してください。できれば、州の弁護士協会など、またはその他のリーガルサービス機関など無料でサービスを提供しているプログラムをまずお試しになることをお勧めします。営利目的の企業のプログラムを利用する場合も、借り換えに成功しなかったら、料金を払い戻すというシステムの方が安全かもしれません。

ローンの支払い不履行となった場合、それぞれの置かれている状況、財産の所有形態、定期的収入があるか、など様々な要素を分析しない限り、どのような方法で状況に対処するのが最善なのか、回答を出すのは容易ではありません。Foreclosureになることが分かった段階で、別の債務なども考慮し、破産することが最善の策である場合もあるでしょう。ローンの額が極端に評価額が下がった住宅価格の倍になってしまったなどという場合は、鍵を貸し手に返却しそのまま家を明け渡してしまうというのが最善の策である場合もあるでしょう。最も重要なことは、「一人で悩む」ことを止め、専門家に相談し、経済的な困難が病気を引き起こすほど悩まないようにすることでしょう。経済的損失は苦しいものですが、元気で生きて行ければ「第二のチャンス、敗者復活戦」が可能な米国のこと、やり直しは可能です。病気になるほど苦しむ前に、どのようにすれば自分が一番楽になれるのか、研究しましょう。