「犯罪」と強制退去


今回は、予定を変更して交通違反なども含め、「犯罪」と強制退去(DeportationまたはRemoval)との関係、通常米国市民でない、いずれからのVISAにより米国内に滞在する人々が注意しなければならない事項について考察します。日本からの出張中、観光旅行中、米国駐在中に交通事故に巻き込まれた、傷害を伴う事故を起こしたというような相談も目立ちます。夫婦喧嘩の末に「家庭内暴力」として警察が介入し刑事事件になるというような例もあります。もちろん、これら全てが刑法上の問題となるということではありません。単純なスピード違反であれば、チケットを切られ、違反に対する罰金を郵送して片づけるという対応で問題ないこともあります。しかし、スピード違反でも超過速度が大きければ「Criminal Traffic Violation」となる場合もあります。このような場合は、単にチケットに対して罰金を郵送して片づけるという対処方法を選択すると、後に移民法上の問題が起こる可能性があります。罰金を郵送するという行為は、自分の罪を認めること(有罪であると認めることになります:「Guilty Plea」)になりますので、後の時点でいずれかの移民法上またはその他就職のための願書などに「あなたは何らかの犯罪で有罪になったことがありますか」と質問された場合は、「はい」と答える必要が出てきます。いずれかの時点で米国入国・VISA更新などに支障がでる場合もあるでしょう。「有罪を認める」犯罪の種類によっては強制退去の理由になる場合もあります。

そこで、一般的には、軽微な交通違反などは別として、刑法上の問題で被告の立場になった場合は、刑法専門の弁護士に相談するだけでは不安が残ります。腕利きの刑法専門の弁護士も必ずしも移民法に詳しいわけではありませんので、簡単に被告が一番楽な方法で「有罪を認め」執行猶予や罰金などで済ませようとして検察官と交渉しがちです。刑法上は、最も合理的な交渉結果でも、被告が米国市民でない限り、移民法上の観点からはそのような結果が取り返しのつかない不利をもたらすこともあります。少し複雑な刑法上の問題に直面した場合(Criminal Traffic Violationも含め)、刑法専門の弁護士に相談すると同時に移民法専門の弁護士にも相談する必要があるでしょう。また、弁護士なしで対処する場合も十分「有罪を認める: Guilty Plea」が移民法上どのような問題となる効果を有するのか調べる必要があります。

以下は強制退去の根拠となる犯罪についての法律です。

道徳的堕落に関わる犯罪(8 U.S.C. s. 1251(a)(2)(A)(ii)
「道徳的堕落」というのは定義が明らかでありませんが、米国に入国してから5年以内にこの範疇に属す犯罪で1年以上の禁固刑以上の有罪判決を受けたかまたは1年以上の禁錮刑を受けた者。この「道徳的堕落」に関わる犯罪というのは、全国一律ではなく、各州が定めた刑法に則った犯罪項目となります。1年以上の禁固刑以上で有罪という意味ですが、「禁固または懲役1年、執行猶予6か月」というような執行猶予刑もこの範疇に含まれます。つまり、1年の刑だが、「執行猶予」となるので良い結果であったと喜んでいられないことになります。一般には謀殺(murder)、殺人(manslaughter)、強姦、窃盗などがあります。未成年者との性交渉(statutory rape)の場合は、未成年者本人の同意の有無にかかわりなく犯罪が成立します。家庭内暴力で相手側または両方が傷害を受けた場合など、加害者が1年以上の禁固刑となり執行猶予となった場合は強制退去の理由となりえます。また、これはある意味で疑問となる点ですが、加害者がカウンセリングを受けるように裁判所が命令した場合、カウンセリングの回数が10回以上であれば強制退去の対象になりえるということです。禁錮刑・懲役刑(執行猶予付きであっても)を364日以内にまたカウンセリングは9回までに回数を減らしてもらうというような「工夫?」が必要となります。刑法専門の弁護士はおそらく、このような極めてテクニカルな知識はないでしょう。

また注意を要するのは、刑法上の問題が複数回となりますと、軽犯罪とみなされる罪名でも複数回の有罪判決となれば強制退去の根拠になりえることも知っておく必要があります。これは入国5年以内というような制限はありません。

加重重罪(aggravated Felony) (8 U.S.C. s. 1251(a)(2)(A)(iii)
「1994年移民および国籍テクニカル訂正法:The Immigration and Nationality Technical Corrections Act 1994」はこの範疇の犯罪定義を拡大しました。この範疇に含まれる犯罪は、謀殺、武器、破壊手段、爆発物の不法トラフィッキング、マネーロンダリング、懲役5年以上の刑の対象となる暴力犯罪、強盗、身代金要求を伴う犯罪、児童ポルノ、売春関連ビジネス、奴隷または強制的サービス、詐欺(20万ドル以上の金額に関わる)、不法移民入国手配ビジネス、ドラッグ関連犯罪それらの犯罪を犯すための陰謀、未遂などです。

日本人が特に注意を要するのは、例えばスーパーマーケットや店の前で「ちょっと1分だけだし、子供が寝ているので。。。」というような理由で、子供を車の中に置いたまま買い物をするというような例です。これも、「児童虐待の罪」として重罪の範疇に入ってしまう場合もあり、置き去りにした親が刑法上の犯罪として裁かれるというようなことが起こり得るといことです。このような場合、刑法上の弁護も重要ですが、「有罪を認める」ことが移民法の望ましくない結果をもたらさないように注意を払いながら検察官と交渉する必要がるということを忘れないでください。これも合理的には説明できないある意味では理不尽なことですが、永住許可者(グリーンカード所持者)でも強制退去の対象になるということをお忘れなく。この点では永住許可者が別のVISAによる米国滞在者と比較して、各段有利であるということはないのです。

簡単に有罪を認めず、検察側と刑罰を軽減してもらう交渉を行うには、まず、無罪を主張し検察官と交渉することになります。交通違反チケットを受領した場合は、まず、そのチケットの「無罪の主張:Not Guilty Plea」にマークを付け、保釈金(bond)を支払い、検察官が指名された後にその検察官と犯罪範疇と刑罰を軽減してもらえるように交渉します。ここの部分は、このような手続きに慣れた刑法専門の弁護士に任せる方が安心でしょう。

誰しも、刑法上の問題などには巻き込まれたくないと思っているのですが、交通違反その他意図せず、対処を迫られることもあります。十分注意を払いながら、各ステップ毎の意志決定を行うようにしてください。