他州における納税義務
先月は、E-Commerceと税金の話をしましたが、主としてアリゾナ州外のビジネスがアリゾナ州「取引税」の対象になるか否かに焦点を絞りました。先回は、特に一般の消費者が関わる場合について話をしましたが、今回は企業間の取引についても取り上げましょう。特にアリゾナ州の企業が他の州に対して製品を「輸出」している場合を考えてみましょう。この場合、電子取引(E-Commerce)であってもその他の対面による契約、電話による交渉の結果であれ、当該取引の成立の過程による差はありません。
米国各州は、一般的に有形商品およびサービスの小売取引について売上税を課します。通常はベンダー(販売者)が税をカスタマーから取り立て州に収めることになります。そして、州内での使用、貯蔵、消費を目的として州外で行われた商品の取引については「使用税」を課税する州もあります。これにより、州民が州外で行う買い物も課税対象範囲に入れることができるのです。この場合は、州はそのような商取引をモニターできないために、州外ベンダー(リモート・ベンダー)に納税義務を負わせます。このような州外商取引が課税対象となるか否かが、先回解説した「NEXUS」の有無により決まります。「NEXUS」があるとみなされると課税対象となります。このような州外商取引は各州政府の監視が行き届かないところで「業者の自己申告」に依存した形で行われるために、少なくとも260億ドルの課税漏れがあるという推定もあります。不景気のために税歳入が大幅に減少して困っている全米各州にとり、この数字は大きな問題であり、将来的には各州ともできるだけ多くの州外取引を課税対象とするシステムを樹立すべく努力することになるでしょう。
州内での取引の場合にも、最終的に「輸出」(他州または外国への輸出)される商品の場合には、まず売り手が売上税を徴収し「輸出」された後に徴収金額を払い戻しするというシステムを採用する州もあります。最近新聞紙上を賑わした脱税のケースは、2州に跨る商取引を悪用したものでした。タイコー・インターナショナルという一連の企業買収により(買収された企業の中にはいくつかの日本の企業も名を連ねていました)短期間に急成長を遂げたエレクトロニクス巨大企業のCEOを6月初旬に辞任したデニス・コズロフスキー氏は、その直後100万ドルの売上税脱税容疑で逮捕されました。もちろん売上税の納税義務は本来は、商品の販売者が負うものですが、このケースでは納税義務を負う業者は某画廊・エージェントでしたが、コズロフスキー氏はこの画廊と脱税を共謀したという容疑で逮捕されたのです。取引の対象はクロード・モネなど印象派の作品を含む一流の絵画1300万ドルほどでした。容疑としては、コズロフスキー氏はこれらの絵画をニューヨーク州のマンハッタンで買い、ニューハンプシャー州にある自社のオフィスに飾ると偽り、虚偽の出荷伝票を作成し、空箱をニューハンプシャー州に輸送させ、絵画そのものは自分の住居の一つであるマンハッタンのコンドメニアムに飾ったというものでした。つまり、州外に持ち出す商品の取引は最終的に免税となるという特例を悪用したことになります。大金持ち(ここ4年間くらいで彼に支払われた給与と株式を合わせると4億5000万ドルといわれている)にしては姑息な手段を使った、しかし意図的な脱税ですが、脱税をしようと意図しない場合でも、課税、免税特例などの規定が複雑で意図せず結果的に脱税になっていたなどという場合もあるかもしれません。コズロフスキー氏の場合、上記の容疑で有罪が確定すると4年を最高とする懲役実刑となる可能性があります。
テキサス州の場合
アリゾナ州の企業が、他州例えばテキサス州において自社の製品を販売した場合はテキサス州の売り上げ・使用税の納税義務が生じるでしょうか。テキサス州は、一般にテキサス州で商品・サービスを販売する者に対してその売り上げの--6.25パーセントの「売上税および使用税」(Sales and Use)を課していますが、この納税は、消費者ではなく事業者の義務となっています。州内での貯蔵、使用、消費を目的として州外で商品を購入する場合、テキサス州消費者に代わり、当該州外小売業者がこの使用税の納税義務を負います。
先月号の記事でも説明しましたが各州ともに州の売上税や使用税の納税義務を負うか否かを決める判断基準として、NEXUS(関わり)の有無をみます。テキサス州は、NEXUS を認める条件として次のような項目を挙げています。
* 州内に永続的、一時的、直接的またはその名称の如何を問わず子会社やエージェントなどを介して、オフィス、流通場所、販売またはサンプル用の場所、倉庫、貯蔵所、その他の物理的ビジネス施設を有すること。
* 州内に、当該小売業者またはその子会社の指示に従う、当該商品に関する販売、配達、または注文取りなどの目的で営業する自社の代表者を有すること。セールスマン、エージェント、販促担当員、修理人、設置者、検査人などを含む。
* 州内にある有形財産のリースからリース料を徴収すること。
* 州内で配達用車両を運用していること。
* フリーマーケット(蚤の市)、トレードデイ、その他の当該課税品に関するイベントを行うこと。
* 自社の商号で営業するフランチャイジーまたはライセンシーを有すること。
そしてこれらの条件の有無を証明する証拠としては、下記の項目を使用します。
* 出荷伝票
* 車両運用記録
* 請求書
* ガソリン・レシート
* 地区割り図表
* 当該納税者による営業所関連文書
* 配達指示
* 配送記録
* 支出伝票
* 運転経路記録
NEXUSを有すると規定されると、当該者は売上税・使用税を消費者から徴収して州に納税する義務を負います。
納税義務免除
テキサス州内で商品を販売する場合でも、全てが州の売り上げ・使用税の対象となるわけではなく、免税特例がいくつかあります。宗教団体、慈善団体、教育団体、青少年団体、赤十字関連団体、ボランティア消防団、商工会議所、政府機関(連邦、州、郡、市、学校地区、など)が免税対象となっています。
その他下記の場合には免税となります。
* 商品が直接州外の顧客に出荷される場合。しかし、この場合にも、州間出荷記録を保存する必要があります。
* 商品を購入した顧客が当該商品をそのまま州外に輸出する場合。しかし、この場合、州内での取引完了時には一旦6.25パーセントの課税額を徴収し、後に実際に州外への「輸出」が完了した時点で徴収額を顧客に払い戻します。
* 再販の対象となる商品の取引。これは販売者がテキサス州内またはメキシコにおいて消費者に商品を直接販売せず、商品を購入する者が後の時点で同州またはメキシコにおいて当該商品を消費者に販売する場合。商品を卸売り業者に販売する場合などは、その良い例です。この「再販」カテゴリーは、製造する製品の原料、材料、部品として当該商品を使用する場合も含みます。この場合、最初の販売業者は、その顧客である「再販業者」または「製造業者」から、「免税証明書」を受け取る必要があります。この「免税証明書」には、取引毎に一回づつ受け取る「免税証明書」と当該取引がその後すべて再販用であるという「ブランケット(一括)免税証明書」と二通りあります。
免税対象になった場合は、上記いずれの場合でも、自社による州外出荷証明、顧客による州外輸出証明、顧客からの「免税証明書」などの証拠物件を確実に保存する必要があります。これらの証拠書類がない場合、州の税務当局の監査が実施された際に自社の行為を正当化できず「脱税行為」としての嫌疑を掛けられる可能性が生じます。数年にもわたる「脱税行為」に対する罰則は厳しいものであり、追徴金も馬鹿になりません。まして、嫌疑が掛けられただけで「___社売上税脱税」などと新聞に名前が出たりすると社会的損失は計り知れないものがあります。
州外からの郵便によるカタログ、雑誌、広告チラシ、印刷、ラジオ、テレビ、郵便、電報、電話、コンピュータデータベース、ケーブル、無線その他の広告手段による販売なども、テキサス州内での使用の目的でテキサス住民が購入した場合は課税対象となります(つまり州外の販売業者がテキサス州税務当局に対して売上税・使用税を納税する義務を負う)。いずれにしても、自社の製品がどの州で売られているのか、どのような目的で購入されているのか、購入者により別の州または外国に輸出されているのかなど、取引の詳細を細心の注意を払って把握しておくことが必要でしょう。相当に面倒な作業ですが、数年間知らずに「脱税」した結果多額の追徴金を課されることになるよりは、比較的小さな出費で済む作業です。「備えあれば憂いなし」です。