2007年9月
 

 今回は、ソーシャルセキュリティ制度の中で障害児がどのような給付を受けることができるかという点について考察してみました。ソーシャルセキュリティ当局が「障害者である」と認定すると、18歳未満かつ両親が一定額以下の収入である場合に障害者としての給付を受けることができ、18歳以上であれば両親の収入に関係なく、独立して障害者としての給付を受けることができます。

 ソーシャルセキュリティ制度は、1935年に連邦政府が樹立した制度であり、高齢者、失業者、困窮者、障害者、寡婦(夫)、親を亡くした子供たちなどを経済的な困難から救うために創設されました。2004年現在、米国のソーシャルセキュリティ制度から給付を受けている人数は4,800万人であり、そのうち4,400万人が成人、400万人が子供たちでした。まだ給付を受けている人々の3人に1人が退職者年金(68%)ではなく障害者年金(13%)、寡婦(夫)年金(10%)、親を亡くした子供たちへの年金、障害児への年金(合計8%)などでした。


 障害者、障害児への年金は、ソーシャルセキュリティ制度の下でSSDI(Social Security Disability Insurance: ソーシャルセキュリティ障害者保険)およびSSI(Supplemental Security Income: 生活保障補助)の二つのカテゴリーの給付を受けることが可能です。


 直接ソーシャルセキュリティ制度の恩恵を受けている18歳未満の子供たちは310万人(親を亡くしたり、親が障害者となったりした場合)、さらに追加して220万人の子供たちがソーシャルセキュリティ制度から給付を受けている家庭内で生活しています。合計すると500万人以上の子供たち(米国の子供たちの7%以上)がソーシャルセキュリティ制度の利益を得ていることになります。内訳をみると、黒人の子供たちの26%、ヒスパニック系の子供たちの20%、白人の子供たちの10%がソーシャルセキュリティ制度の給付の恩恵を被っています。(National Center for Children in Povertyのホームページwww.nccp.orgからの情報)

障害者としての認定


 成人が障害者としての認定をソーシャルセキュリティ当局から受けるためには、働いて得る収入が週当たり$500を超えないという条件を満たす必要があります。


 また過去に一定の期間働いていた、そして申請の直前には働くことができないために離職していたという条件を満たす必要があります。怪我や病気のために通常の労働ができないということも、もちろん要件となります。病気の中には、精神的な疾病(ダウン症、自閉症、ADD、その他の知的障害を含む)も含まれます。身体的、精神的またはそれらの組み合わせによる障害を証明するための医師の診断書、臨床的報告、医療ラボなどからの検査の結果なども必要となります。


 18歳未満の子供が障害者としての給付を受ける場合、当事者の収入、両親やその他の同居者の収入も考慮されます。当事者である子供の収入は、2007年現在の基準として1ヶ月900ドルを超えてはならないとされています。症状は、通常のその年齢層の子供たちがする活動ができないという程度に重症である状態が直前の最低12ヶ月継続していたこととも要求されます。給付を受けるための一定の傷害、疾病などについては当局がリストを保有しています。通常、実際に障害児としての認定を受けるためには、3-5カ月位の時間を要しますが、エイズ、全盲、全聴覚障害、小児麻痺、ダウン症、MS、重度の知的障害、出生時の体重が2ポンド10オンスより少なかった場合など障害児であることがほとんど自動的に認められるような場合は、給付は即時開始されます。


 障害児であることを認定してもらうための実際の手続きとしては、ソーシャルセキュリティ当局に申請すると、州当局の認定担当部署に連絡され、州当局(Disability Determination Services)が認定を行います。認定を拒否された場合は、行政裁判官に対して認定を拒否された日から60日以内に控訴できる制度になっています。


 障害者が18歳に達すると、別の基準で判定が下され障害者としての資格は適正な検査の後に継続となります。この場合、給付の額は両親や同居人の収入と関係なく成人の障害者への給付が決定されます。15歳以上の障害児に対しては、リハビリテーションやその他の訓練などのサービスが提供されることもあります。

 最近、日本と米国との間(日本にいる親を米国に連れてきたいなど)での高齢者への年金、アルツハイマー病などの障害が出た場合、障害児を抱えた場合の収入面や医療面でのソーシャルセキュリティ制度からの支援についてのご相談をいくつか受けました。次回は、日本から親を呼び寄せる場合の心得、制度的な支援などについて考えてみたいと思います。実際に、親の看護の経験がある方のインタビューを行い、みなさまに貴重な経験を分かち合っていただきたいと思います。インタビューの際の質問として、こんなことを聞いてみたい、というご希望があれば、どうぞ、ykattorney@yahoo.co.jpまでお寄せください。

 残暑のアリゾナ、熱射病、夏風邪などに負けないように、ご自愛ください。