2016年5月
そろそろアリゾナの夏に向かう暑気が訪れる頃になりました。スノーバードの人たちはもう北の国に戻ってしまった頃でしょう。フリーウェイなども心なしか空いてきたようにも感じられます。
今回は、海外に居住する日本人の日本国パスポート更新関連最新情報について書きます。特に「海外に居住する日本人」というカテゴリーの中に入る数十万から100万人のレベルで存在すると言われている「事実上の二重国籍者」の日本国パスポート更新関連の情報です。
この「事実上の二重国籍者」の中には、「自らの意志で外国籍を取得した者」や「生地主義の国に生まれ、かつ日本国籍を父または母から継承した者の中で22歳までに日本の国籍を選択したが、一方の外国国籍を放棄する手続きをしていない者」また「出生により二重国籍者となったが22歳までに日本国籍選択の宣言をしていないまま、日本国籍を選択したと見做された者」などが含まれます。前者は日本国国籍法を厳格に適用すれば「日本の国籍を喪失した者」となり、後二者は「日本の国籍を選択した後に原則に反して二重国籍時のもう一方の国籍を離脱する手続きをしていない者」として、結論的は両者とも日本法や日本政府の観点からは「存在してはならないカテゴリーの者たち」となる人たちです(これはあくまでも日本国の法律を厳格に適用すると。。。という前提に立てばということですが)。
これまでも、これらの多くの人たちが日本の国内で日本国パスポートを更新したり、新たに申請したりしてきました。その手続きに関しては、海外に居住する「日本人」たちの間では常に情報交換を必要とする重大な件でした。
この関連で最近話題になっているのは、ホームページからパスポートの申請書をダウンロードしたり、またパスポート事務所や市役所などでパスポートの申請や更新を願い出る際に「日本国籍以外に別の国の国籍を有していますか」と書面により質問されるという新しい現象です。この質問は以前でも口頭で聞かれるということはありました(私自身も聞かれた経験があります)が、あるか無いかを聞かれるだけでそれ以上の詳しい情報は求められませんでした。最近日本国内でパスポートの更新を行った「海外居住の日本人」の人たちから集まってくる情報の中には様々な現象が含まれます。日本国パスポート更新については、私のところにも毎週何通か相談のメールや電話などが寄せられ、当然、その人たちがパスポートを更新・申請した際の対応や結果についての情報も沢山入ってきます。この記事はこうした情報をできるだけ広く共有化し役立ててもらいたいと思い書いています。
パスポート更新を拒否されたケース
埼玉県某市における最近1か月以内の出来事ですが、書面による質問に「はい、他の国の国籍を持っています」と回答し、さらに「どのような経緯でその外国の国籍を(この場合米国)取得するに至ったか」という質問に対して、「帰化による(つまり自らの意志で米国籍を取得)」と回答したところ、某市を通して当地のパスポート事務所に送られた申請書に対して「あなたはすでに日本国籍を喪失しているので、日本国パスポートは申請できません」という拒否の回答が返ってきました。そこで、この方は申請を取り下げました。
新宿・池袋のパスポート事務所での対応
そこで今度は別の人を介して新宿と池袋のパスポート事務所において日本のパスポート申請の際にこの「別の国の国籍を有しているか」という質問に回答しなければならないのか、またこの質問に回答しない場合はパスポートの発行は拒否されるのかと質問したところ、いずれも「否」という回答だったということです。つまり、この質問はパスポート申請者に対して書面により質問されているが、回答しなければならない義務ではなく、回答しなくてもパスポートは申請できるし、発行もされるという回答だったのです。それではこのような質問を書面にしていかにも全員が回答しなければならないような様相で聞いてくることにはどのような意味があるのでしょうか?通常、質問されれば、回答しようと努力するという人々の性向に働きかけ、外国籍を持っている人に対して自ら申告するようにプレッシャーをかけ、明確に「外国籍を持っている。取得した経緯は自らの意志で帰化したから」と回答した者にはパスポートを発行せず、「あなたはすでに日本国籍を喪失しています」と宣言する。。。というやや消極的ではあるが事実上の二重国籍者として行動している「日本国籍喪失者」を洗い出し、パスポートの発行を拒否しようという意図が見えます。しかし、全てのパスポート事務所で同様なポリシーが均一的に同時的に適用されているのかというと、これも疑問です。
少し勇気がある者が「この質問には回答しなければならないのですか?回答しない場合はパスポートの発行を拒否されるのですか」と質問すると、あるパスポート事務所では「回答しなくてもパスポート発行を拒否するわけではない」という回答が返されるというまたまた摩訶不思議な現象が起きているわけです。このような質問に回答しパスポート発行を拒否できる者は拒否して行くという政府の方針の表れであるのかもしれません。しかし、同時にこのようなずれは「地域差」の要素が濃いのかもしれないという気もします。つまり、今日の時点ではパスポートの更新を目指す人々にとっては埼玉県某市で申請するより、都内のより大きなパスポート事務所で申請し、上記の質問には回答しないという方針を貫くことで日本国パスポートを更新申請・取得できるということのようです。
日本国内や在外公館(大使館・領事館)などにおけるパスポート申請についての個々の対応情報をお寄せください。世界中に居住する「海外居住日本人」たちはこの問題に大きな関心を寄せています。