2000年5月
さて今回も、引き続き税法・会社法の専門家である同僚の弁護士フィリップ・グティラ氏に登場してもらいCorporation(法人会社)として組織することの利点と不利な点について解説してもらいます。
グティラ氏は、フェニックスのダウンタウンにあるRyley Carlock & Applewhiteという法律事務所で主として税法、会社法などの領域で弁護士/CPAとして活躍中です。(Tel:602-440-4845、電子メールは、pguttilla@ryleycarlock.comです)今後、ビジネスの法人化、会社法に関するご相談などがございましたら、Guttilla/Kondoチームでお手伝いさせていただきます。
Sコーポレーションとしての課税カテゴリー選択
Corporationの株主はIRSの「S」という課税カテゴリー(コード)を選択することができます。「S」カテゴリーを選択することにより、このCorporationは「S-Corporation」になり、パートナーシップ(合資会社)またはSole Proprietorship(個人企業)と同様な課税方法が採用され、株主は所得、支出、利益、控除額を個人の申告書に報告することになります。「S-Corporation」は、会社としての申告を行いますが、会社としては納税せず、会社に対する課税額は株主が個人として納税することになります。株主は、Schedule Kー1を受取りこの書式を使って個人の申告書に添付する形式で会社の所得と損失を報告します。
通常ほとんどの小規模な会社が「S-Corporation」を選択します。自ら「S-Corporation」を選択する旨を明らかにしない場合は、このCorporationは「C-Corporation」として分類されます。「C-Corporation」は、個人の申告とは分離され独自に純所得に対する納税額を申告する必要がある課税対象です。「C-Corporation」の場合、まず最初に会社として納税し、残りの額を株主に配当として分配します。この配当に対して株主各個人が課税対象になります。C-Corporationの所有者は、個人としては二重に課税されることになります。小規模C-Corporationは、会社の所得を全て株主やその他の従業員に給料として分配することにより課税対象となる法人所得をゼロとし、二重課税を避けることができます。このような節税方法は、株主が会社の事業を所有してる限り問題なく実行できますが、同株主が会社を売却したい時には二重課税を回避することができません。資産売却による会社の利益に課税され、さらに株主が手にする利益にも課税されてしまいます。このような会社の売却に際しての二重課税を回避する唯一の方法は、会社の株のみを売ることです。しかし、このような場合、課税およびその他の法律的理由でこの会社の株を買う者は稀でしょう。
S-Corporationには多くの適用制限がありますので、これを理由にC-Corporationを選択する場合もあります。S-Corporationは株式の種類としては1種類しか許可されていません。つまり、S-Corporationは、会社が清算されることになった場合に有利な扱いを受けたり、会社への投資額に対して %の利益を優先的に保証するというような優先株式を設けることができません。また、S-Corporationの株式を所有できるのは、個人、別のS-Corporation、および一定の信託(トラスト)のみです。LLCやパートナーシップはS-Corporationの株主にはなれません。非居住者である外国人は、S-Corporationの株主になることができません。またS-Corporationの株主の数は、75までに限定されています。
資産寄与と配分
LLCは、上記のようなS-Corporationに課された制限を受けることなく会社としての課税を個人の課税に一本化することができるという利点があります。一般的に、課税の対象となることなく %またはそれ以上の株式を所有する株主は、会社に対して価値が上昇した資産を寄与できます。しかし、この資産が一端会社の所有になった後に再び同一の株主たちに所有権移転されると、会社は税法上当該資産を売却しその利益を株主に分配したものとみなされます。つまり、分配された資産に内在する利益は、C-CorporationかまたはS-Corporationのどちらであるかにより会社としてまたは株主個人として課税対象となります。例えば、ある個人が会社を組織して 万ドルの価値がある土地を会社名義に権利移転した場合、S-Corporationであれば、この土地を後に会社から同一株主または別の株主に再び権利移転すると、当該土地からの利益が5万ドルあった場合この額が株主個人として課税対象となるわけです。LLCの場合には、異なった結果になります。一般的にLLCの所有者は、即時課税対象となることなくLLCの資産を権利移転したり分配したりできます。
結論
LLCでなくCorporationの形式を採用する主な理由は、二つあります。その一つは、Corporationの株主が課税されることなく組織変更や会社の売買を行うことができること、もう一つは、自営業税を最小限度に抑えることができることです。自営業税を回避するためのこの戦略は、自営業者が401(k)を利用して所得税課税を後の時点まで延期したい場合にはあまり意味がありません。しかし、今流行のインターネット関連の小規模事業などで株式上場会社が買収するかもしれないような会社であればCorporationとして法人化しておく方が有利でしょう。しかし、個人業であり、会社買収の対象にはなりそうもないというような小規模企業であれば、前々回に解説しました数々の有利な点を思い出していただければLLCが有利なことが一目瞭然です。Corporationとして法人化するよりはるかに柔軟性があり、報告義務も簡略化されています。事業を展開する中でどのような法人の形式を採用すればよいかは、それぞれの企業またはその所有者が、何を望み将来何を目標とするのか、また周囲の環境によって異なります。最終的に判断なさる前に、弁護士またはCPAなどにご相談なさることをお奨めします。
次回は、親が亡くなった場合などの日本での遺産相続、お墓の問題など少し調べてご報告したいと思います。日本の税理士である染谷育子さんに登場していただきます。6月号の記事になると思いますが、皆様の中にもいろいろと将来のこと思案中の方、不明な点、質問したい点など多々あることと思います。どうぞご質問をお寄せください。私が用意した質問と合わせて解説していただきます。私事で恐縮ですが、先月父が亡くなり日本にしばらく帰国しておりました。私と同様に親を日本に残して米国で生活している日本人の方々は沢山おられると思います。遠く離れていると、分からないことも沢山あります。普段からどんなことを認識し何をどう準備すれば良いのでしょうか。