2003年7月
最近著作権について興味深い質問を受けましたので、回答も含めてご紹介いたしましょう。
みなさまも、会社、ご自分のビジネス、趣味などでウェブサイトをお持ちであったり、ウェブサイトのデザインをなさったりすることがあるでしょう。ウェブサイトの内容(画像、テキスト、レイアウトなどを含む)については、誰が著作権を所有するのでしょうか。著作権の所有者が誰であるのかは、何故重要なのでしょうか。
著作権を所有していれば、誰か別の者が作品(ウェブサイト)の全体または部分をコピーして使用した場合に自らの権利を主張して、相手の「類似作品、コピー」の使用を禁止するよう要求できます。趣味の場合はともかく、ウェブサイトをビジネスなどで使用している場合には、紛らわしいサイトができて商売をさらわれるようなことがあっては困ります。また、ウェブサイトを作成し後に改定したい場合、自分で著作権を所有していなければ改定も思うようにできなくなり不便です。
今回受けた相談は、「ウェブ・デザイナーを雇ってウェブのデザインをしてもらいたいのだが、当人が著作権を主張している。通常著作権は誰に属すものなのでしょうか。自分はウェブ・デザインも含めてウェブに関するサービス提供をビジネスにしているので、こちらが著作権を持たないと困るのですが」というものでした。
WORK-FOR-HIRE(雇われて作品(または一般的に著作権の対象物)を作製・作成した場合)
著作権法は、一般的に作者・著者に著作権を付与していますが、例外的にいわゆるWORK-FOR-HIREの場合には著作権が作者・著者を雇用した雇用者の側にあるとしています。最近は日本でも会社の研究所に勤務していた時にした研究で取得した特許に対して、数十年も後になって昔受領した「雀の涙」ほどの報奨金では不公正であるとして、以前に勤務していた、または現在まだ勤務中の会社を訴える元研究員・元従業員の数が増えてきました。著作権に関しても、同様の争いが起こる可能性があります。WORK-FOR-HIREという概念は、著作権の対象物(なんらかの作品)を創造した本人が特定の会社の従業員であり、当該創造行為がその従業員の仕事の一部として遂行された場合、または独立した業者、または個人が一時的に下請け業者、契約業者として雇用された期間に契約上の特定なプロジェクトなどを遂行した場合を意味します。
上記の相談の場合は、一時的に、またはプロジェクト毎にウェブ・デザイナーを雇用して、プロジェクト毎または顧客毎に「これこれの仕様で、これこれの内容を盛り込んで、視覚的にはこれこれの。。。」などという詳しい指示を与える場合もあるでしょう。また詳しい指示がない場合でも、著作権対象物となった作品は作者が当該プロジェクト用に雇用されていた一定の期間の間に作製・作成されたものです。また、「対価」として契約により料金が支払われるか、雇用の条件として給料が支払われていたでしょう。
このような意味で、上記の相談の件におけるウェブ・デザイナーの立場は、典型的な「WORK-FOR-HIRE」の場合に近いでしょう。
そこでこのようなウェブ・デザイナーを雇用(一時的契約による雇用も含め)する立場である相談者の側に立って考えてみると、どのような注意が必要でしょうか。
まず第一に、相互の権利関係を明記した正式な書面による契約を締結なさるようにお勧めします。契約の内容として、
● まず著作権が全面的に雇用者の側に属すること
● 雇用者は、ウェブデザインが完成した後、これをウェブデザインを担当するように依頼した顧客の希望により自由に改定、変更できる
● 上記改定、変更を行う場合、当初のウェブ・デザイナーばかりでなく、自由に他のウェブ・デザイナーを雇用することができる
● 一方、当該ウェブ・デザイナーは当初の雇用者の許可なく、(たとえ自らが行ったデザインであっても)これを変更・編集できい
● 最初に契約する際に、当該ウェブ・デザイナーによるデザインが別の第三者の著作権、その他の知的財産権を侵害していないことを保証させる
● 契約は、プロジェクト毎または一定の期間に限定して締結される
● ウェブデザインを行ったデザイナーは、部分的または全体として類似したまたは同一のウェブ・デザインを別の第三者のために作製・作成したり、売却したりしない
などという条件を契約に盛り込みましょう。後になり権利関係が泥沼化して争いに巻き込まれることのないようにいたしましょう。