2010年2月

 お正月気分もそろそろ終わり、2010はどんな年になるかなという期待感ともう1月も終わりと焦る気持ち両方を味わっていらっしゃる頃でしょうか。

 年末年始、忘年会、新年会とお酒を飲む機会も多かったのではないでしょうか。
今回はDUI(酒気帯び運転)についてお話いたしましょう。交通違反関係のご相談では、スピード違反についでDUIで捕まってしまったという方のご相談も多いです。血中アルコールを調べられ、その程度に応じて罰も異なりますが、今回は法定アルコール%でDUIとされる程度を超えたアルコール分が発見された場合のことを書きます。

 マリコパ郡検察局のホームページを見ると、2008年中アリゾナ州内で3,999人が酒気帯び運転で逮捕されたということです。全逮捕者数の11.9%を占め、酒気帯び運転が関わる自動車事故は6,757件、324人が死亡しました。死亡事故の59.26%が酒気帯び運転者が関わるものでした。マリコパ郡を見ると、酒気帯び運転が関わる事故が4,240件、死亡者が132人、負傷者は2,888人でした。

 酒気帯び運転で逮捕されると、通常24時間拘置所に入ることが義務付けられます。運転中にパトロールの警官に逮捕され、そのまま拘置所に入れられるケースも多くあります。明らかに酔った状態で運転していれば、そのまま運転して帰宅することを許すわけには行かないのは妥当なことです。後に裁判所に出頭するように書かれた書類を受け取りますが、その時点で無罪を申し立て、できるだけ軽い罪に落してもらえるように交渉するお手伝いをすることも多々あります。できるだけFelony(重罪)と名がつくような罪名にならないようにMisdemeanor (軽罪)に落してもらう努力をします。

 このような交渉をすることもなく、なんら申し立てもせず、裁判所への出頭日も無視してヒアリングに出ないでいれば、裁判所(通常は市の裁判所)が逮捕状を発行する手続きをします。こうなると路上を運転中にパトロールカーに捕まるという可能性が高くなります。自動車のライセンス番号や免許証番号などが警察のデータベースに入りますので、パトロール中の警官はそれらの番号に当たる車を探しています。そこまで行ってしまってから「何とかしてください」という依頼を受けることもあります。時には、旅行中にアリゾナで運転中に酒気帯びで逮捕され、裁判所への出頭日を無視して日本に帰ってしまい、その後風の便りに自分に逮捕状が出ていることを知り、何とか逮捕状と取り消せないかという相談を寄せてくることもあります。

 逮捕状まで出ていない場合であれば、相談を受け裁判所への出頭日の前に検察官と交渉していわゆるDiversionプログラムを適用してもらい、講習会に出席し罰金を払うことを条件に執行猶予付きで刑を当初の罪状より軽くしてもらい「有罪」の記録が実際には残らないようにすることもできます。この場合は、例え日本に戻ってしまった場合でも、こちらで弁護士が代理人として様々な続きをすれば電話を日本からかけ、通訳を介して裁判官が本人が実際に「有罪を認める」ことを確認して罰金を払い、一件落着することもあります。

 逮捕状が出るところまで進んでしまったケースは、簡単には解決できません。逮捕状を取り消したもらうために「有罪を認める」意志表示をすると、日本にいる本人にこのような意志表示が確かに本人の意志表示か裁判官が確認するヒアリングを同様に行う他、追加的条件が課され、それらをクリアしないと問題解決に至りません。スコッツデール市の例を取ると、裁判所からJustice Services, Inc.なる第三者機関に名前が送られ、その機関が「アルコール・アビューズ・スクリーニング」という本人に数十の質問に回答させ、どのような措置が必要かという評価を行います。本人が日本にいる場合であれば、裁判所の許可を正式に得てからこの第三者機関と打ち合わせしてスクリーニング実施の日時を決め、電話で時差を乗り越えて約2時間くらいの聞き取り調査をします。この時間には通訳の時間も入っています。同時に、24時間拘置所に入るという罰はオプションでなく必須の要件となっているため、逮捕時に何時間拘置されたか調査し、24時間以上すでに拘置済みということが分かれば、新たに24時間拘置所に勾留されずに済むこともあります。有罪を認めることで罪名を軽くすることに成功した場合でも、24時間以上の拘置を条件として裁判所が命令した場合は、既に24時間逮捕時に勾留されていれば、その時間を総拘置時間(日数)から差し引いた残りの時間拘置されることになります。

 この条件をクリアしないと逮捕状の取り消しはしてもらえません。通常、州外の者がアリゾナ州で酒気帯び運転で捕まった場合、本人が居住する州でアリゾナ州裁判所の命令と同じ罰を当該州の拘置所に拘置されることでクリアできます。つまり、アリゾナ州で24時間拘置の命令が出ていた場合、テキサス州の拘置所に申し出てその拘置所でアリゾナ州裁判所が命じた時間「請負い拘置(?)」してもらいその拘置所の係官に「拘置証明」をもらいアリゾナ州各市の裁判所に提出することでこの条件をクリアできる場合もあります。しかし、本人が日本を住所としている場合はどうでしょうか。日本の当局で調べてもらった結果、日本の拘置所が外国の裁判所からの命令を実施するために「請負い拘置」をするというような前例はなく、これは実行不可能ということでした。

 有罪を認め執行猶予の条件としては、酒気帯び運転についての講習会に出席しなければならない場合もあります。この場合も、州外から訪問中に逮捕されたような場合であれば、自分が居住する州に戻ってその州で類似の組織が主催する類似のプログラムに参加し「プログラム終了証明書」をアリゾナ州裁判所に提出することで要件を満たせます。しかし、このプログラム参加についても、本人が日本に住む場合は証明を取ることがほとんど不可能です。日本に住む人の場合は酒気帯び運転で捕まった場合は、都道府県の交通安全協会などが提供する「酒気帯び運転者用の講習会」などに参加することでプログラムを終了できますが、これも調査したところ、外国で酒気帯び運転をした者を日本の違反者用講習会に参加させるというようなことができるシステムにはなっていないということです。

 電話でのヒアリングを行い、アルコールアビューズ・スクリーニングを終了し、罰金を支払った上で、逮捕状取り消しの最後の条件として講習会と24時間拘置という要件をクリアしなければならなくなります。本人が日本に居住している場合は、結局、講習を受け、拘置してもらいために最初の逮捕地に戻らなければなりません。これら全てのステップを、裁判所、検察官、Justice Service Inc.と交渉しながら、コーディネートしスケジュールを立て実行して行くためには数か月のやり取りが必要です。

 スピード違反や酒気帯び運転でパトロールカーに捕まるという経験は、割合によく起こりえることかもしれません。もし、そのようなことが起こった場合は、決して裁判所への出頭命令を無視することのないようにいたしましょう。対処したくない。。。ということで放っておくと、後で逮捕状が発行され、その状態を解消し問題解決に辿り着くために数十倍も費用やエネルギーを費やすことになります。起こってしまったことは、即時対処するようにいたしましょう。
逮捕状を避けるためにの検察官との交渉は、裁判所に出頭を命令された日付より前に行う必要があるということに注意しましょう。

 みなさま、安全運転をお忘れなく。