2005年10月
 

 今回は、離婚の際のソーシャルセキュリティ給付の分割についてお話します。離婚の際の財産分割については、できる限り公平に全ての共有財産を平等に分割するというのが原則です。結婚期間中に居住していた家、自動車、銀行預金、株式・証券など全ての項目を調べて分割することになりますが、ソーシャルセキュリティや企業年金、401K、連邦・州の公務員年金、軍人年金などもそのような財産分割の対象または考慮項目となります。年金の種類によっては、退役軍人などのように年金の受給者または将来給付を受ける権利者固有の権利であり、直接分割できない種類のものもありますが、そのような場合にも、全体的として「公平な分割」を実行するための計算に含むことになります。


 この記事ではソーシャルセキュリティ給付の分割について見てみましょう。みなさんは、離婚した配偶者が、一定の条件さえ整えばもう一方の配偶者のソーシャルセキュリティ給付額の50パーセントを受給できるということをご存知でしょうか。歴史的には、ソーシャルセキュリティは加入者自身の固有の財産権とみなされ、離婚の際の財産分割の対象にはなりませんでしたが、挑戦を受けて、裁判所の判決も次第にソーシャルセキュリティ給付も共有財産分割の対象として考慮する方向に変化してきました。通常の場合は、夫のソーシャルセキュリティ給付金の方が高額であることが典型的ですから、ここでも夫の方が勤続年数も多く、ソーシャルセキュリティ制度に払い込む金額のベースとなる給与が高かった場合を想定しましょう。


 離婚した妻が元夫のソーシャルセキュリティ受給額の50パーセントを自ら受給できるための条件は、1)結婚していて期間が少なくとも10年間あること、2)ソーシャルセキュリティの主たる受給資格者(この場合元夫)がすでに給付を受ける年齢に達していること(少なくとも早期引退の年齢である62歳に達していること。すでに実際に受給しているという必要はありません)、3)離婚した妻自身のソーシャルセキュリティ給付金額が元夫の受給金額より多くないこと、4)元夫・妻自身が少なくとも62歳(早期引退の年齢)に達していること、5)妻が再婚していないこと、6)妻がまだ退職・引退していない場合は、離婚から2年以上経過していること、などです。


 元夫の受給額の50パーセントというのは、離婚した時点で元夫が給付を受けられたであろう金額ではなく、元夫が実際に給付を受ける年齢に達したときの受給額の半分、または退職していない場合は受給か能楽の半分という意味です。例えば、20歳で25歳の夫と結婚し、31歳になったときに離婚した妻の場合、夫がソーシャルセキュリティ給付を受けられる年齢に達した後、自分自身も62歳になった時点でその給付額の50パーセントを受給できることになります。つまり、31年間待つ必要があるわけです。元夫が亡くなった場合、つまり妻が未亡人となった場合は、元夫のソーシャルセキュリティの給付金の100パーセントを妻が60歳になった時点で受給できます。またそれ以降に再婚しても、受給資格を喪失することはありません。


 50パーセントの意味ですが、これは最高給付額と考えると理解が容易になります。妻の独自のソーシャルセキュリティ受給額が400ドル、元夫の受給額(実際に受給している場合も、また受給資格が生じたがまだ退職していない場合も)の50パーセントが700ドルである場合、妻は両者の差額分300ドルを追加受給できる、つまり総額で700ドルの受給額となるということを意味します。


 この他にも、夫が障害者である場合、妻が障害者である場合など、多様は状況を考慮しなければなりません。個別の例については、実際の状況がどうなっているか、それぞれの条件を確認する必要があるでしょう。原則的に、離婚した妻も、無年金とはならず、一定の条件を満たせばソーシャルセキュリティ給付の対象になるということを忘れないようにいたしましょう。例え小額の追加給付であっても、「塵も積もれば山となる」といいますので、ソーシャルセキュリティ・アドミニストレーション(社会保障局)に問い合わせるなどしてください。