1999年1月

 パーティーなどでお酒を飲む機会が多くなる季節です。そしてどこへ行くにも車でというアリゾナでの生活ですから、いけないこととは知りながらお酒を飲んでから「もう酔いもさめたから大丈夫」と自分で運転をして帰宅するようなことがあるかもしれませんね。今回は、アリゾナ州の法律で飲酒運転がどのように扱われているか調べてみました。

法律による飲酒運転の規制


 アリゾナ州法A.R.S.s.28-692(A)(2)は、運転していた時点から2時間以内または自動車を実際にコントロールしている状態の者が血中アルコール濃度(Blood Alcohol Level)0.10以上であるとされた場合は違法と規定しています。


警察官によるテスト


 通常、道路上での警察による取締りの結果として飲酒運転の疑いで逮捕されるという場合が多いわけですが、実際にはどのようにして飲酒運転であることが分かるのでしょうか。警官は、パトロールをしていて運転ぶりがおかしかったり(横にふらふら揺れながら運転しているなど)、スピード違反や信号無視をした車を見つけるとサイレンを鳴らしてその車を止め運転者をチェックします。休日、祝日などに道路脇で特別取り締まりをしているパトロールカーを見たことがある方も多いでしょう。一箇所にパトロールカーが数台止まってゲートのような態勢を取り通過する車をランダム(無作為)にチェックする場合もあります。いずれにしても運転者をチェックしている中で、担当警官が「酒臭い」と感じた場合または「飲酒運転の疑いあり」と合理的に信じる理由があると考えた場合は、血中、吐息中、尿中などのアルコール濃度のテストを受けるように当該運転者に要請することができます。
 この時運転者が素直にテストを受けることに同意し、上記のアルコール濃度(道路上ではほとんどの場合が風船を使った吐息中アルコール濃度テストの場合が多いでしょう)の検査を受けた結果が0.10より少ない数値であれば、「飲酒運転の疑いなし」ということになり、無事放免されることになります。勿論、スピード違反や信号無視などの違反があった場合には、その分の違反チケットは渡されることになるでしょう。テストの結果アルコール濃度が0.10以上となると、「飲酒運転」となり上記の法律違反で罰を受けることになります。A.R.S.s.28-691(B)の規定によれば、血中または吐息中アルコール濃度が0.10以上というテスト結果が出た者は、有罪が確定すると九○日以上の運転免許証停止の罰を受けます。

テストを拒否すると


 アルコール濃度のテストを受けることを拒否するとどうなるでしょうか。「飲酒運転の疑い」で身柄を拘束されてから(つまり自由に走り去ることができない状態)担当警官のアルコール濃度テストの要請を拒否すると、担当警官は拒否者に対して「このアルコールテストに同意しない場合は、十二ヶ月間の免許停止になる」との警告をします。実際に同テストを受けることを拒否すると、十二ヶ月の免許停止になるばかりでなく、この時点以降の法的手続き(法廷での裁判など)において、「アルコール濃度のテストを受けることを拒否した」という事実が証拠として提出可能となり、当人にとって不利に使われることになります。(A.R.S.s.28-692(I)の規定) 
 ここで問題なのは、例え運転者当人が「飲酒運転」の件で後の時点に無罪放免となった場合にもこのアルコール濃度テストを拒否した結果の罰則である「十二ヶ月の運転免許停止」が取り消しとならない点です。つまり、このテストはこのような法律の規定がある以上、拒否すべきでないということになります。その他の「指で鼻を指す」とか「片足立ち」とか「アルファベットを最初から言う」などという諸テストは、拒否した場合にも法律で罰則は設けられていません。また、担当警察官の質問に対して、何時から何時まで飲酒していたとかその他自分のその時点までの行動を詳しく説明したりすると、後にその情報を「飲酒運転の罪を自ら認めた」という証拠として裁判の過程で不利に使われることにもなります。
 身柄を拘束され、テストの結果、アルコール濃度が0.10以上であるとされた者については、身柄の拘束から逃れるためには約四○○ドル位の保釈金を要求されることもあります。本人が現金を所持している場合にはその場で支払いが可能ですが、現金の持ち合わせがない場合個人の小切手では支払いを受け付けてもらえません。家族または弁護士などが銀行振り出しの小切手(Cashierユs Check)または送金為替(Money Order)またはそれに相当する支払い手段を用意することになります。身柄を釈放されたら、自らの運転による帰宅を避け〔再度飲酒運転で逮捕されないように〕別の移動手段を手配します。そして移動手段ができたら、まず病院やその他の医療機関に行き別途に独自の血中アルコール濃度検査を受け、その記録を正確に保持するようにします。これは後で実際に「飲酒運転」であったか否かを法廷で争う場合に被告側の独自の証拠として使うことが目的です。


重罪の可能性


  このような「飲酒運転」も、五年間という期間に複数回逮捕されると、より厳しい罰を受けることになります。例えば三回目に「飲酒運転」で逮捕され、アルコール濃度が0.10以上であるという証拠があれば、「重罪」容疑者となり有罪が確定すると最低でも六ヶ月間刑務所に収監されることになります。みなさまの中にはそんな事態に直面する方はないと思いますが、五年間のうちに複数回「飲酒運転」の疑いで逮捕されたような場合は、理論的にはアルコール濃度テストを言われるままにすぐ受けるよりは拒否して一年間運転免許停止になった方がまだましということになるかもしれません。
未成年の場合
 未成年者が飲酒運転で逮捕されるとどうなるでしょうか。一八才未満の者が飲酒運転をしたという嫌疑で保護されると、アルコールまたはその他のドラッグの使用についてのテストを受けるようにと指示され、そのテストの結果、飲酒またはドラッグの使用が認められた場合は、少年審判所は指定の機関による治療・教育プログラムへの参加を命ずることになります。その場合のテストおよび治療・教育プログラムの費用は、本人または両親・保護者の負担とすることができます。それに加えて、一○○ドル から二五○ドル位の罰金を課したりまたは八○時間位のコミュニティ・サービスを命ずることもあります。(A.R.S.s.8-232(E)の規定)


「飲んだら乗るな」を徹底


 いずれにしても、「飲酒運転」で逮捕されるなどという状況は大きな問題を作り出してしまうことになります。法廷で弁護士(時によっては通訳も必要)を雇って争ったり(数回裁判所に足を運ぶことになる場合もある)、運転免許停止になったり、刑務所に収監されたり、費用の点でも時間・労力の点でも大変な負担になります。パーティー、忘年会、新年会などでお酒を飲まれる場合は、十分に酔いを覚ましてから運転するか、他の「飲酒」をしていなかった人に運転を代わってもらうようにしましょう。
 ではまた、みなさま良い(「酔い」ではありませんよ)お年をお迎えください。