2005年1月

 新年おめでとうございます。あっという間に2004年が終わり2005年となりました。
暖かいはずのアリゾナの冬も、今年は朝晩の冷えは厳しいようです。今年も風邪などに負けずお元気で楽しい毎日でありますようにお祈りいたします。


 さて、2004年末に2005年の予算が議会を通過するか否かで揉めていたことを憶えていらっしゃる方も多いことでしょう。予算そのものは事態が急転し議会を無事通過したのですが、そのドサクサに紛れ、いろいろと妥協の副産物としての条項(予算とは全く無関係の)や、「誰が書き入れたの?」と調べてもどこの議員、または誰が書き入れたか不明のままの条項が、ページ数で数えるより「インチ」単位で数える方が合理的であるような分厚い法案の中に議員も誰も読んでもいないし、存在することすら知らなかったような摩訶不思議な条項として立派に組み込まれていたりしたようですが、ここに解説する移民法関連の改正もそのような経過の中で12月4日にブッシュ大統領が署名して正式に法律となったものです。実際に改正になるまで、話題にも議論にもならないまま、「事後報告」として情報が出てきました。改正法の内容に関する資料としては、USCIS当局の12月9日付け記者発表を使用しました。


H-1Bヴィザに関する改正


 今回の法改正は「Omnibus Appropriations Act for FY 2005」という名称であり、その中で移民法関連の主な改正点は下記のとおりです。


1)「American Competitiveness and Workforce Improvement Act of 1998 (ACWIA)」という法律によりH-1Bヴィザを外国人のために申請する雇用主が1998年から2003年10月1日までヴィザ申請時に米国人および永住外国人の職業訓練費用として義務付けられた支払い(当時は$1,000)が復活されたことです。改正後は、この額は一般に$1,500に上昇しますが、特別除外として従業員25人(フルタイム)を超えない雇用主の場合は、金額が$750に減額されます。支払い義務は、2004年12月8日から生じますので、現時点ですでに復活したことになります。今後H-1Bヴィザを申請する場合には全てこの支払い義務が適用されることになります。法改正前に、このようなACWIA支払い義務から免除されていたようなケースはそのまま$1,500、$750のいずれの支払い義務も免除されます。


 2)上記のACWIA訓練費の支払い義務に加えて、新たに「Fraud Prevention and Detection Fee(詐欺防止および検知費)」という名目で$500の支払いが全てのH-1BおよびL-1ヴィザ申請ケースに適用されます。しかし、この$500に関しては、2005年3月8日以降に適用となります。


 3)H-1Bヴィザの上限は現在毎年65,000人分ですが、改正後は米国の高等教育機関で修士号以上の学位を取得した申請者に関しては、最初の20,000人分までこの上限枠の適用外となります。20,000人分が満たされた後は上記のような条件を満足させる申請者についてもUSCISは65,000人分の上限枠の中でヴィザを許可するように要求されます。この改正は、2005年3月8日以降に実施されます。結果的には、米国の教育機関で修士号以上を取得した者に関しては20,000万人分ヴィザの上限が増えるといことになるわけで、3月8日以降できるだけ早めに申請をなさることをお勧めします。


J-1 ヴィザ保持者について


 今回の改正で、医学部を卒業して現在米国にJ-1ヴィザで滞在中の申請者に限り、連邦政府または州の機関が要請した場合、2年間自国に戻り滞在しなければならないという規定から除外され、またH-1Bヴィザの上限枠も適用されなくなります。これは米国内、特に農村地帯における医者不足を解消するための例外規定でしょうか。FY2005のH-1Bヴィザの上限枠はすでに一杯になっていますが、上記の条件を満たした医学部卒業生に関しては2004年12月8日以降(つまり現時点で)当該上限枠に関わらずH-1Bヴィザの申請が可能となりました。


L-1 ヴィザについて


 今回の「Omnibus Appropriations Act for FY 2005」中に含まれる「L-1 Visa Reform Act of 2004」により、L-1ヴィザの取得に関しても改正がありました。今回の改正は、現在しばしば話題になっている「アウトソーシング」の問題に対処したものです。2005年6月6日以降、全てのL-1B申請者は、当該作業そのものが申請主体雇用者とは別の雇用主の管理下または監督下にある場合、または当該別の作業所が主として申請主体雇用者の専門知識に関連するサービスではなく(下請け的)労働力を提供するためにアレンジされている場合、申請主体雇用主の事業所(ワークサイト)とは別の場所を主な作業場所とすることができなくなります。また、例外的にいわゆる「ブランケットL-1ヴィザ」の場合に米国外で申請主体雇用主または有資格雇用主により6ヶ月以上の期間雇用されていたことが必要条件でしたが、今回の改正により、全てのL-1ヴィザの場合に米国外での申請主体雇用主または有資格雇用主により1年以上の期間雇用されていたことを要求されるようになりました。この改正点も2005年6月6日以降の実施となります。


 上記の詐欺予防および検知費としての$500の支払いは、L-1ヴィザの場合にも2005年3月8日以降に適用となります。この$500の支払いは、最初のL-1申請および雇用主を変更しようとする場合に支払い義務がありますが、同じ雇用主が既存のH-1BまたはL-1ヴィザを延長または修正する場合には適用されません。


 2005年が皆様にとり良い年でありますように。