2002年8月
今回は、外国(米国から見て外国、つまり日本も入る)の企業の支店・支社などのトップマネジメント(経営陣)として米国に入国する場合の、L-1Aについて解説します。日本から入国を許可される場合にはお馴染みのH-1Bヴィザなど様々な種類のヴィザがありますが、H-1Bの場合にはスポンサーになってくれる企業を探す努力も必要ですし、相当な時間と労力を要します。意外に見落とされがちなのがL-1Aヴィザです。これは仕事の内容で考えると、外国企業の米国支店・支社、子会社の「重役」特にその組織上重要なポジションを占め、経営に実際に携わる者(つまり経営陣の一人)に適用されるヴィザです。このようなポジションであり、他者からの監督としては、例えば日本にいる上司とか、現地の子会社、支店・支社の社長の指示を仰ぐのみというような場合に当てはまります。もちろん、このような会社、支店・支社の社長、副社長、会計責任者などのポジションを占める者は、このヴィザの適用者です。
L-1Aの利点
L-A1ヴィザの有利な点は、コンピュータ技術者など特殊技能者を対象とするH1-Bの場合のような米国内の労働者との競合を回避するための様々なINSおよび労働省からの要求(長期にわたる募集広告掲載の要求、応募者とヴィザ申請者との資格・能力上の比較検討の必要性)を経ることなくヴィザ申請ができますので、比較的短時間でヴィザを取得できます。当ヴィザ取得の可能性についてのINS側の回答は3、4ヶ月位で出る場合が多いようです。
L-1Aが適用される場合
L-1Aヴィザは、日本の会社(外国企業)がその支店を新たに開設する際に派遣される経営陣などに適用され、当該支店・支社、子会社などの創立後数年を経て当初の経営陣と交代するために新たに日本から人材を送り込むというような場合にも同様に適用されます。L1-Aヴィザの期間は、最初は通常1年間、最長でも3年間ですが、その後2+2+2年間、つまりトータルで7年間まで延長できます。しかし、このような延長のためには、米国内の支店・支社、子会社のビジネスが繁栄し、また本国(日本)の本社も存在し続けるという条件が必要です。本国(日本)の本社または米国の支社・支店、子会社のいずれかが解散、倒産など存在を止めた場合には、L-1Aヴィザおよび労働許可はは自動的に無効となります。この場合、当事者(L-1Aヴィザを受けていた者)は米国を離れる必要がありますが、それまでに滞在許可(ヴィザ)の種類を変更していた者はこのような規則の適用を受けません。つまり、L-1Aヴィザの期間中にグリーンカードを取得した場合などです。L-1Aヴィザ期間中の7年間のいずれかで、グリーンカードを申請し取得することも可能です。INSはこのような場合、当事者を「PRIORITY WORKER」として第一優先順位の労働者として扱い移民ヴィザ(グリーンカード)の申請を取り扱います。この場合、最初にL-1Aヴィザを取得してから2、3年後にグリーンカードの申請を行うというのが適当でしょう。(この手続きを日本で行った場合の方が全体的な手順がより迅速に行われるという情報もあります。)
L-1Aヴィザ申請に必要な条件
下記の項目の提出または条件を満足させる必要があります。外国語(日本語)の項目は、正式な証明付きの翻訳を添付する必要があります。
1. I-129申請書。これは非移民労働者用に申請書であり、これにL-カテゴリーの補足を添付します。
2. 米国の支店、支社、子会社などにおける申請者の現時点での仕事の内容。重役としての仕事の内容、経営のために必要な特殊な知識や能力の説明の詳細。
3. この申請者が外国(日本)の本社で1年以上経営に携わる者として雇用され報酬を支払われていた証拠書類。(源泉徴収票など)
4. 申請者の履歴書。
5. 外国(日本)の企業と米国の支店、支社、子会社が関連するという事実を証明する書類。
6. 申請料金$130、しかしこの他にも弁護士料、会社を新たに米国内に設立するための料金などが必要。
7. 米国内に設立する支店・支社、子会社の事務所のリース書類。
8. 米国内に設立する支店・支社、子会社のために開設した銀行口座開設を証明する書類。
9. 米国内に設立する支店・支社、子会社と外国(日本)の本社の組織図。
10. 米国内に設立する支店・支社、子会社の今後1年間のビジネス・プラン
11. 米国内に設立する支店・支社、子会社のIRSから発行される識別番号。
12. 外国(日本)本社の設立を証明する書類、および昨年度の申告書、貸借対照表などの書類。
13. 外国(日本)本社銀行口座について過去1年間の資金の動きを証明する記録。
14. 米国内に設立する支店・支社、子会社に関する、電話帳への広告掲載記録など。
揃えなければならない書類の項目などの数は多くなりますが、一定の条件が整っている場合は問題なく集めることができる項目ばかりです。アリゾナで被雇用者として雇用主・スポンサーを探しておられる方々の数も多い中で、皆様の中には日本で企業の経営に携わるポジションにおられた方々もあると思います。雇用主・スポンサーを探すという努力を行うと同時に(これは容易なことではありません)、日本で働いていた企業に「私が御社を米国で発展させますので、支店を出しませんか」と申し出て自分が中心となり米国の支店・支社、子会社、合弁会社などを設立するという方法も考えてみてはいかがでしょうか。